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第1話

初めて男のチンコをしゃぶったのは18になったばかりの秋だった。 相手は掲示板で知り合った年齢も分からないオッサンで、ふかふかのベッドなんてものはなく、ヤッた場所といえばすえた臭いの籠もる公衆便所。 自分のと比べても明らかにちっさいチンコのクセにチン毛はボーボーで舌に絡みついてくるし、口に出されたザーメンは妙に粘っこく、喉に貼り付いてきたのを覚えている。 当時、男女のセックスについては漫画だとか友人と見たAVだとかである程度の知識はあったから、フェラされたらクンニするのは当然で、男同士でもお互いに気持ち良くなって、最後はまったりピロートークってのが当たり前だとか思ってたから、相手がよくわからないオッサンでもきちんとイッてくれた事は嬉しかったし、次は自分が気持ち良くなれる、自分が満たされる番だと期待してた。 でも、結局オッサンは俺のチンコをしゃぶってはくれなかった。ちょっとは喜んでくれるかもと思って無理矢理飲み込んだオッサンのザーメンは、数日たっても苦い味を口の中に残し続けた。 きっかけは自分の性的嗜好を意識し先生に相談したことだった。 強制参加のキャンプにシャワーがなく、洗い場の蛇口にホースを繋げて皆一斉に体を洗う。 "男で興奮する" ことに気が付いたばかりの多感な時期で、友人たちの裸で興奮する自分への罪悪感があったし、そんな自分を隠したままキャンプに参加するのは友人たちへの裏切りに思えたし、純粋に自分にもキャンプを楽しめる方法があるんじゃないかって思ったんだ。 そして引率の先生に相談することにした、それが間違いだった。 自分にとって幼い頃から先生は"先生"(先を生きて導くもの)であって、半ば聖人君子のような存在で、ただそれだけで信頼に値する、そんな存在だった。 第一声がコレだった。 「だったらキミは男のチンポをしゃぶれるのか!?」 そんな言葉が聞こえたときも、まだ自分を信じてくれるのではないか、肯定してくれるのではないか、そんな気持ちが残っていたのだと思う。 それでも頭の中は白い靄がかかったような状態で、そんなんだから周りに人がいるだとか、思ったよりも先生の声が大きく注目を集めていただとか、そういった状況を全く把握しないまま機械的に返事をしてしまったんだ。 「しゃぶれます…」って。 その後の事は良く覚えていない。 まだ外は明るかったのにどうやって午後を過ごしたのか、片道50分の道のりをどうやって家まで帰ったのか、マジで何も覚えていない。 結局、キャンプでは予定どおり体を洗ったし、先生たちからも周りで話を聴いてたはずの一部の生徒達からも何も反応がなく。 俺が鈍感で周りの反応に気付いてなかっただけなのかもしれない。 実際は陰口を言われていたかもしれない。 けれど、俺のところまでは何の感情も、何の言葉も行動も届いてこなかった。 "無かったこと" にされた、そう思った。 だから、証明したくなったんだ。 自分の発言を、自分の性を、自分の抱えてる欲求を。 一番大事なはずの自分の "心" を置いてきぼりにしてるのに気が付かないで。 笑えるだろ? 18までの俺は好きな女の子に告白したこともあった。 付き合って、両思いになって、手を繋いだ。 キスをする前に別れちまったけど、好きな相手と段階をきちんと踏んで、気持ちを大事に育んで、幼いながらもお互いの "心" を大事にしてきたはずだったんだ。 ホント笑える。 俺のファーストキスはオッサンのチンコ。 唇に残ったのはジョリジョリした陰毛の感触。 ファーストキスの味はザーメンの味。 苦くて粘っこい男の味。 あの公衆トイレに俺の心は取り残された。 そして当時置いてきぼりにした自分の心はまだ置いてきぼりのままで、拾い上げれていないままなんだ。 「これが俺のファーストキス。まぁフェラしただけだし、いじめにあったとか、レイプされたとかそんな悲惨な話じゃない。だから男に夢見るなって話だ、笑えるだろ?」 そう言ったら目の前で話しを聞いてたガキが突然泣き出した。

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