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第3.5話(縁の下の茂美ママ)

はぁ、いつも通りね。 先週のことがあって、ちょっとはヒロキの男あさりも収まるかと思ったんだけど。 来ちゃってるわねぇ。 あの子がいると、カウンターが2席埋まっちゃうからお店からしたら結構な損害なのよねぇ・・・ よりにもよって書き入れ時の週末よ?はぁ!?たかが2席とかアンタ何言ってんの?殺すわよ?だったら一度バーの経営してみなさいよ!イヤになるわもう。 ダメね、愚痴ばっかり言ってたら女が廃るわ。 これでもね、一応アタシとしてはヒロキのことを少しは気にかけてんのよ? このバーを開いた当時からの付き合いだし、初めて来たときからあんな無表情だし。 オマケに、入ってきた時の第一声が何だったと思う? ”僕とセックスする人を探しています” ですって。 バカにしてんじゃないわよ!?ちょっと綺麗なお顔立ちしてるからって調子に乗ってんじゃないわよ!! ・・・脱線したわね。 そんなんだから、いいオトコでもさっさと見つけて勝手に幸せになりなさいなって思ったわよ。 新規のお客様には声をかけて、なるべく危ない奴は隣の席に座らせないようにもしたわ。 ・・・なんですって?回りくどいことするんだったらアンタが幸せにしてあげろ? ホホホ舐めんじゃないわよ、アタシのお眼鏡にかなうオトコはね、逞しい筋肉を全身にまとったお鬚の似合うダンディな(オス)なのよ!ハ〇クホー〇ン様みたいなね! あんないかにもなメスの匂いを巻き散らかしたプッシーキャッツには興味ないの。 覚えときなさい、ネコは相容れないものなのよ。 さっきから何度脱線させるつもりよアンタ。 まぁ、そんなこんなで今に至るわけだけど。 アタシは最近、秘密兵器を手に入れたの。 アタシがスマホでちょちょ~いってやれば、ぴゅ~んって飛んでくる、対ヒロキ用特殊戦略兵器よ。 実はもうね、さっきちょちょ~いってやっちゃったのよ。 だからもうすぐぴゅ~んって飛んできて、ヒロキに特大の衝撃波をお見舞いするはずよ! ホラ、ぴゅ~んって・・・ カランカランってお店の扉が開いてぴゅ~・・・・・・来ないわね。 どうすんのよ、アンタ分かってんの今の状況? アタシが築き上げた、アタシの城。 アタシの唯一の憩いの場に、ヒロキと二人っきり。 気まずいったらありゃしないわ。 こんな日に限ってお客は来ないし、ぴゅ~んは来ないし。 もういいわ、オカマの本気を見せたげる。 オカマは差別用語?ハァ?舐めんじゃないわよ、こちとらそういうのも全部飲み込んで、覚悟のうえでオカマやってんのよ。 アンタみたいな小僧っ子に言われたくないわ。 ホント、アンタって脱線させるのが上手いわね。 とりあえずオカマの本気よ。 アタシの裏の貌、魅せてあげるわ!・・・え?見せるの間違い?バカね、魅了するんだからコレでいいのよ。 今からアタシはね、連絡先から先週追加したばっかりの番号にTellしちゃうの。 そして、アタシのあま~い声で相手を悩☆殺しちゃうの。 いやだわぁ、あんな若い子を魅了しちゃうなんて、アタシも罪な女よねぇ。 ・・・分かったわよ、掛ければいいんでしょ掛ければ。ちょっと席を外すわね。 「もしもし、茂美さんすか?先週ぶりっす。」 「ゴラァ!!ユウ坊!!オドレ、ワシのメッセージ見とらんのかあ゛ぁん?ヒロキが店に来とるんじゃぁ!!さっさと回収しに来んかイ!」 「うっっわ!うっるさ!あんた誰っすか?アレ?登録間違えた?でも画面には茂美さんって出てるし、今日誰からもメッセは来てないはず・・・アンタ誰!?」 うそ~ん、そんなはずないわよ、さっき確かにユウちゃんにメッセージ送ったもの。 ・・・あらイヤだ、送信ボタン押し忘れてるじゃない。 しょうがないわねぇ、いいじゃない。 弘法様も筆を誤るし、おサルさんだって木から落ちるのよ?オカマだって相手の乳首の位置を間違えることだってあるのよ~? 乳首じゃなくてボタンの間違いですって?イヤだわ、スイッチって意味では同じじゃな~い。 オトコをヤル気にさせるスイッチ!うふふイヤだわぁ~変な事言わせないでよ~。 もう!分かったわよ!!押せばいいんでしょ押せば!! 「あっメッセージ来たすね!えっっヒロキさん来てるんすか!?すぐ行きます!!ちょうど近くにいるんで、ヒロキさんのこと返しちゃダメすよ!!」 あらまぁ、恋するオトコの情熱ってすごいのねぇ。 それじゃあ、邪魔なオカマはさっさと退散しちゃいましょ。 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて何とやらってね。 最後に優しい茂美オネェさんからのプ♡レ♡ゼ♡ン♡ト。 今日のお店は早仕舞よ、ゆっくりやりなさいな。 ねぇヒロキ、アタシには正直この先何が起こるか分からないわ。 でもね、人生はそう捨てたもんじゃないの。 あの子はきっと、アンタのくだらない思いなんか全部吹き飛ばしてくれる。 アンタにまぶしい光と、暖かい場所を用意してくれる。 アタシはね、あの子を信じてる。 だからもうひと踏ん張りよ、負けるんじゃないわよ。 アタシはアンタのことだって信じてるんだから。 ------------------------------------------------------------------------------------------------ 作者コメント この後、店を出ようとした茂美ママは予想外に早く到着したユウの、さらに予想外に勢いよく空いたドアに吹き飛ばされます。 大事なヒールが折れてしまって茂美ママ大激怒。 ユウ君は後日の弁償&強制デートの約束をさせられるのでした。 なお、本文の「」内以外の文章は全て茂美ママの一人芝居です。 オカマは強し。

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