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第一章 出会い

 梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、学園の人気者だ。  小さな体に、バランスのいい手足の長さ。  さらさらの髪に、形の良い眉。  きらきらと輝く瞳はいつも明るく、やや薄い唇には笑みをたたえている。  多くのオメガ性の少年が生きづらさを抱える中で、早紀は違っていた。  裕福な家庭に生まれ、両親の愛情を注がれて育った。  素直で、朗らかで、そしてちょっぴりわがままな高校三年生。  それが、早紀だった。  先の周囲には、いつも数名の友人たちがいた。  ほとんどがベータ性の少年たちだったが、早紀をまるでリーダーのように持ち上げていた。  彼といれば、退屈しない。  いつも愉快な、話題。  いつも前向きな、目線。  そして、いつも何かしら御馳走してくれた。 「あれ? ここ、新しいカフェじゃん」 「ホントだ。最近まで、工事してたのに」  ある日、早紀たちはショッピングモールのはずれに、新装オープンしたカフェを見つけた。

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