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第十九章・8
早紀は、毎日元気に働いた。
家事をこなし、カフェで勤め。
時折父に会いに行き、衛を愛した。
残り二週間を、精いっぱい生きていた。
「僕、やっぱり衛さんとは離れられないみたい」
「どうした? 急に弱気だな」
ベッドの中で抱き合いながら、早紀は首を横に振った。
「弱気なんじゃないよ。強気なんだよ」
素肌の内股を衛に擦り付け、キスを一つ。
「衛さんと、ずっと一緒にいられるように、って、いつも考えてた」
「早紀」
胸にサラサラの髪を撫でつけ、キスを二つ。
「でもそれには、衛さんの協力が必要なんだけど、な」
何だって、と衛は早紀の顔を見た。
「この先も、私といられる方法があるのか?」
「あるよ」
「言ってみなさい。聞くから」
その前に、と頬に手のひらを添わせ、キスを三つ。
「キスして。唇に」
迷うことなく、衛は早紀に口づけた。
甘いひとときが、今夜も広がり始めた。
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