23 / 52

第23話 仁の申し出

「仁、何してるの?! 現場はなるべく触らない方が……」 僕が止めるのも聞かず仁は手袋を片手にはめると、 散乱した本を片すように積み上げ始めた。 「それにしても凄い本の量だな…… STEM? 何? お前、こんな本読むのか? そう言えばお前が何を学んでいるのか聞いてなかったな…… 日本へは一体、何を学びに来たんだ?」 そう言って仁は訝しげな顔をした。 「あ…… 僕……科学が好きで…… 大学では……日本の文化を…… そう、日本の文化を……」 少し言い淀んだ僕の態度に、 益々仁は疑いの目を向けた。 “彼は感が良いのかな? 何か疑問を持ったかもしれない……” 「ふ~ん、日本の文化ね~」 何か気付いたようにそう言うと、 仁は散らばった僕の大学の資料などを拾い始めた。 「仁って英語分かるんだね……」 そうボソッと言うと、 僕の方をフイっと振り返って、 本棚に残った本や資料などを手あたり次第にめくり始めた。 仁が辺りをひっかき回し始めた途端、 「君! 当事者意外に引っ掻き回されると困るんだけど」 慌てた警官にそう言われ、 「俺は当事者だ! サムは俺の恋人で俺の物も此処にはあったんだ!」 と言い切ったので、 僕は疎か、陽向も光もビックリして仁の方を見た。 きっと彼らにとっても仁のそのセリフは晴天の霹靂だったのだろう。 「また、お前はそんな……」 光の反発するようなセリフに、 「なんだよ? 今はそう言うことにしておいた方がいいんだろ? お前だって何が起こってるのか直に知りだろ?」 そう言う仁に、 「そんな、皆を巻き込むような事……」 と反論したけど、 「これが国にいる両親にわかれば、 お前、すぐに呼び戻されるぞ?」 そう仁が囁いたので、少し考えて この場はそれで繕ってもらう事にしたけど、 こんな派手に荒らされれば、 恐らく本国にはもう知れ渡っているはずだ。 「それで? 他に無くなってる物とか無いのか?」 仁に聞かれ、僕は当たりを見回したけど、 他に思い当たるようなものはなかった。 不幸中の幸いで、僕の研究材料はここには微塵も置いてない。 首を左右に振ると、 すぐに鑑識がやってきて指紋の採集を始めたけど、 別に怪しい指紋は出なかった。 やっぱりかと言う思いはあったけど、 警察には 「物取りでしょうね。 恐らく取られたものは返ってこないので、 鍵を取り替えて注意をなんたら、かんたら」 と言われてその場は治った。 彼らが僕の家を後にした後、 「納得できないな…… お前たちはどうなんだ?」 仁の質問に、 「これ、只の物取りにしては変じゃ無いか? ここ、セキュリティーはかなり良いよな? 今エレベーターを上がってきただけでもそれはわかるし、 それに物取りが普通こんな最上階近くのそれも奥の角部屋を 思いつきで狙うか? 完全に確信犯だろ? おまえ、俺たちに何か隠してる事はないのか?! 今まで話した事が全てなのか?!」 そう光も仁と同じような事を思ったようで、 彼に言い寄られ僕は万事休すになった。 その時 “ブーッ、ブーッ、ブーッ” とカブちゃんから救急の連絡が入った。 “こんな時に何てタイミングの悪い!” 皆一斉に僕の方を見たけど、 「ごめん、アメリカからの緊急電話みたい。 ちょっと待てて」 そう言うと僕は席を離れた。 電子通信時計を嵌めると、 カブちゃんが4Dになって空中に浮き上がった。 「カブちゃん……」 思わずニックネームで呼んでいた。 カブちゃんは、 「は?」 と言うような顔をしたけど、 直ぐにいつもの鉄仮面の様な顔に戻ると、 「ある人物をずっと追っていたので、 君の状況は既に分かっている……」 と如何にも、 “今日の事を知っていながら止めなかった” と言うような言い方をしたので、 「そんな…… そこまで分かって居たら、 どうして事が起こる前に止めれなかったの? 僕の大切な写真が…… ジュンの写真が…… 取り戻してよ! ジュンの写真を取り戻してよ! じゃないと、僕はもうこの研究からは降りる! それにせっかく出来た友達を巻き込んでしまって、 その上に嘘をつき続けるなんて、 もう嫌だ! この所為で友達もいたことなかったに、 やっとできた友達なんだ! せめて彼等には本当の事を言わせてよ! 彼らは絶対に僕の味方になってくれるから!」 そう泣き叫ぶと、 カブちゃんは僕の質問はよそに、 「今夜の便でそちらに向かいます」 そう一言だけ言うと、 通信を切った。 「カブちゃん! 待ってよ! 何? カブちゃん自身がこっちへ来るの?!」 そう叫んでも、カブちゃんとの通信は切れたままで、 静粛さだけが僕の周りに残った。

ともだちにシェアしよう!