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第24話 乗り掛かった舟

“コトッ” と音がしたのでドアの方を振り向いた。 するとドアの向こうから、 僕の叫び声が聞こえたのか、 仁が気まずそうに顔をのぞかせた。 「仁……」 僕はビクッとしたようにして仁の目を見た。 “彼の映像を見られた? それよりも今の会話聞かれた?” 僕の心臓がドキドキと早鐘の様になり打った。 「スマン、大声が聞こえたから…… 大丈夫か?」 振り返ったの僕の顔を見て仁が伏し目がちにそう尋ねた。 「ごめん、見苦しい所見せちゃったね、 大丈夫だよ」 そう言いながら袖口で頬に残った涙を拭いた。 僕の泣き腫らした顔を見たせいか、 彼等はそれ以上何も問いかけて来なかった。 それよりも陽向が、 何やら電話をチャチャッとかけて、 なにやらやり取りをしていた。 そして電話を切ると、 僕の方をクルっと振り向いて、 「直ぐに新しい鍵がやってくるよ。 今度のは簡単にはコードが破れないのにしたから!」 そう言ってニコリとほほ笑んだ。 「あ、有難う……でもここ、契約書に鍵は指定のって……」 僕が鼻を啜りながらそう言うと、 「大丈夫! 此処、光ん家が管理してるマンションだから! さ、散らばったもの方付けよ! 今夜寝るとこ無くなっちゃうよ!」 そう言ってサッサと片付けに入った。 「陽向のああ言うところが良いだろ? あいつ、唯の腰掛け女房じゃ無いんだよ。 すごい努力家でさ、 うちの事業なんて関係ありませ〜んって顔してるけど、 暇さえあればああやっていろんなコネクションを暗記したりしてるんだ。 うちの窓際に電話してみるとわかるけど、 このマンションの鍵業者を割り当てるまで、 恐らく2、3度は関係者をって電話回されるぞ?」 そう言って光が得意げに微笑んだ。 そんな光をボーっとしてみていると、 「ねえ、今夜は僕達が此処に泊まってあげる! 一人だと心細いでしょ? 家に呼んでも良いけど、 生憎空いてる部屋がないんだよね〜 なんせ、光の本で家は埋め尽くされてるからね~ それに佐々木君はすねかじりの実家暮らしだし〜 茉莉花さんに聞いて本家の方に泊れるか聞いても良いけど、 此処は部屋余ってそうだよね! 自分ちの方が気兼ねしなくていいでしょ?」 ニコニコしながらそう陽向が申し出てくれた。 僕もかなり怖かったので、 此処は言葉に甘える事にした。 「じゃあ僕と光はちょっくら家まで戻って予備のお布団運んでくるね!」 そう言って陽向は光と家まで戻って行った。 僕は仁と二人残され、少し緊張した。 「写真の事は済まなかったな」 仁が不意にそう言ってきた。 「いや、君のせいじゃないから…… それよりも一緒にいてくれてありがとう…… もしこれが僕一人だったらって考えると……」 そう言うと、 「お前って本当は流暢な日本語を話すんだな」 そう言われて、さらに気まずさが増した。 「ごめん……」 僕は謝るしか出来なかった。 「いや、別に良いよ。 お前にも色々と訳があるんだろ? 今日の電話の奴はお前んちの関係者か?」 そう尋ねられ、コクンと頷いた。 「あの電話凄いんだな。 なんて言うんだ? ホログラム的な物か?」 そう言われて、びっくりしたのと慌てたので、 「見てたの!?」 と大声を出してしまった。 仁は少し焦ったようにして 「いや、盗み見してた訳じゃなくて、 お前を呼びにいった時に目に入ったんだ。 でもお前たちの会話は誓って何も聞いて無いから!」 と必死に取り繕っていたけど、 そう言った仁に凄く後ろめたい気持ちがした。 「ううん、僕の方こそごめん。 僕もちょっと訳アリで…… 言えない事だらけで申し訳ない……」 そう言いかけると、 「あのさ、もし今でも恋人役が必要なら俺が……」 再度の仁の申し出に仁を見上げた。 「でも……それだと君が……」 仁のプライベートを僕の我儘に付き合わせるのは気が引ける。 最初に仁に会ったときのカモフラージュ的な思いは、 その時にはすっかり消え去ってしまっていた。 「いや、良いさ、別に決まった奴も居ないし、 好きな奴も……」 そう言った時仁がまた切なそうな表情をした。 でも僕は今日見て感じた事を黙っていようと思った。 これ以上彼のプライベートには踏み込まないでおこうと思った。 でも、もしかしたら僕の恋人役をしてる内に 好きな人のことは忘れる事が出来るかもしれない…… それに彼らも僕の泥船に乗りかかったようなもんだし、 もしかしたら僕の近くにいた方が、 僕にはボディーガードもいるし、安全かもしれない…… そう思って、 「じゃあ、迷惑でなかったら…… でも、もし、もし君に好きな人ができた時は直ぐに言ってね。 僕、そこまでして君を縛り付けようとは思わないから! それに僕の我儘だけど、 もし君たちがジュンを探す協力をしてくれたら……」 そう言いかけると、 「それは勿論協力するが、情報が乏しすぎて…… 写真さえ見つかれば…… 写真の事は本当にすまなかったな」 写真が盗まれたのは仁の所為じゃないのに、 そう言って仁はバツが悪そうに目を伏せた。

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