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第46話 繋がらない携帯2
仁は一通り僕の携帯を調べると、
「やっぱり素人目で見ても分からないな……
携帯っていつも肌身離さず持ち歩いてるのか?」
そう言って携帯を差し出した。
僕は携帯をバッグに入れると、
「いつもって訳じゃないけど、
外に出る時は必ず……」
そう言って少し考えた。
でも、他人に触られた記憶が無ければ、
携帯を家に置いたままで出かけた事もない。
仁は自分のポケットから携帯を取り出すと、
どこかへ電話をかけ始めた。
暫く発信音を聞いていたけど、
「おかしいな? 出ないな?
留守電にも繋がらない……」
そう言ってもう一同掛け直していた。
「ねえ、誰に電話してるの?」
そう尋ねると、口に人差し指を当てて、
シッとする仕草をした。
その後GPSらしきものを開けて何かを探していた。
暫くすると、携帯をポケットに戻して、
「おかしい、トムに繋がらない。
この番号は緊急用で必ず出るって言ったのに出ない……
GPSも切られている」
そう仁が言うもんだから、
「早く家へ帰らなきゃ!
ごめん仁、僕、行かなきゃ」
僕は慌ててその場を去ろうとしたけど、
仁に又腕を掴まれ、
「待て!」
と止められた。
「マンションへは帰るな」
そう言われ、
「何言ってるの!
トムに何かあったかもしれないんだよ?!
こんな時にじっとしてられないでしょ?」
そう言って仁の手を振り離そうとすると、
「そのトムに何かあったからそう言ってるんだろう!」
仁の断言に僕は呆然と立ち尽くした。
「何言ってるの……
何で仁がそんな事……」
すがる様に彼を見上げると、
「以前、トムに頼まれたんだ。
このナンバーに繋がらなくなった時はサムを頼むって」
と僕の方をガシッと掴んでそう言った。
「そんな……いつの間に……」
震える声でそう尋ねると、
「初めてトムに会った日だよ。
彼にこのナンバーを渡されて言われたんだ。
近いうちに彼の身の上に何かが起こる筈だって」
そう仁に聞かされ怒りが込み上げて来た。
「何でそんな大事な事僕に言わずに仁に!」
そう叫ぶと、仁は優しく僕の手を取って、
「もしかしたら、これも全て仕組まれたことかもしれない」
そう言った。
「え? それってどう言う意味……?」
「もしかすると、この尾行も
わざとお前に気付かれる様にやったのかもしれない。
恐怖心を抱かせてトムに連絡がいく様に。
トムと連絡が繋がらず、
携帯も様子がおかしい。
先ずお前はどうする?」
「どうするって……
トムが心配だから直ぐに帰ろうって……」
「だろ? 向こうの狙いはそこだったのかもしれないぞ?
何も知らないお前が家に飛び込んだところで……」
そう仁に指摘され僕は震えが止まらなくなった。
「これから俺の家に行こう。
少なくともお前の所よりは安全だ。
それから考えをまとめよう」
そう仁に提案され、少し考えてコクンと頷いた。
仁に差し出された手を取った時、
「あれ〜 ドクター!
偶然ですね〜 まだこんな所にいたんですか〜
大学は大丈夫なんですか〜?」
第二のタイミングでスティーブが現れた。
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