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第47話 消えない疑問

何時ものようにニコニコとして僕の前に現れたスティーブは、 トレードマークの瓶底眼鏡を人差し指で抑えながら、 真っ赤な顔をして僕の前に現れた。 息を弾ませてハッハとして真っ赤に染めた顔は、 まるで飼い主の元へと走って行く犬の様だ。 綺麗な赤い髪が白い肌にマッチして、 顔のそばかすでさえも可愛く見える。 でも……。 “スティーブ…… 何だかタイミング良くない? それに家にいた筈じゃ……“ 僕は仁を見上げた。 どんなに繕っても、 スティーブに対する疑惑は、 彼が初めて日本に来た時から変わらない。 会えてトムとカブちゃんがいるから 何とか理性を保てているようなもんだった。 仁の方をチラッと見ると、 彼も僕と同じ事を思っている様だった。 ”普通通りに振る舞うんだ。 アイツが信頼できる奴かは俺には未だ分からない“ そう仁に耳打ちされ僕は頷いた。 「あれ〜 スティーブ? こんな所でどうしたの?! うちにいたんじゃ無かったの?! トムやカブちゃんはどうしたの?!」 なるべく平静を装って、 そう言いながら僕は生唾をゴクリと飲み込んだ。 でも何処から見ても挙動不審者だ。 スティーブも一瞬、 “???” としたような顔をした。 ”ダメだ〜 動揺して普通通りになんて出来ない〜“ 僕は助けを求めて仁の目を見た。 仁は冷静にスティーブの事を判断するように 彼の事を見つめた。 スティーブはにこりと笑うと、 「トムさん達は家ですよ〜 それよりも、何何〜 2人で見つめあっちゃって! 前から聞こう、聞こうとは思ってたけど、 2人は恋人同士?!」 と僕の心配をよそに、 思ってもいなかったことを持ち上げられた。 あまり突然の事で、 僕は唾が気管に入ったように咳き込むと、 「何言ってるの?! そんな訳ないでしょ!」 と、ドギマギとしながら上ずった声で否定した。 所が肝心の仁はというと、 僕の肩に軽く手を置いて、 「サム、もう隠して置けないよ。 皆わかって来てる、 ここらで正直に言おうじゃないか」 と真面目な顔をした。 僕はビックリして腰が抜けそうになった。 「な……な……何言ってるの!」 ワナワナとして否定しようとすると、 仁は僕の手をギュッと握って目配せをした。 “そうか、そうか、これはフリなんだ……” 少しガックリとした自分に少しびっくりしたけど、 「ハハハ〜 実を言うとそう言う事なんだ〜 ハハハ〜」 と、棒読みになってしまって、 スティーブは訝しげに僕を見つめていた。 でも仁はお手の物で、 もしかして経験者?とでも言う様に、 「じゃ、そう言う事だから、 ちょっと俺達の事はそっとして置いてくれないか?」 と、冷静に仁スティーブに伝えた。 スティーブは仁を見てコクコクと頷くと、 親指を立てて、 “OK!” とでも言う様に僕にウィンクした。 僕が一人でドギマギとしていると、 「それと……」 仁はそう言いかけると、僕の手をもう一度ギュッと握り締めた。 僕達は顔を見合わせると、 仁はフッと僕に微笑んで、 「スティーブが家を出た時はトムは家にいたと言う事だったが、 彼の携帯に掛けても通じないんだ。 何処かへ出かける様な事言ってなかったか?」 スティーブの方を向きそう尋ねたけど、 スティーブは首を捻るばかりだった。 “そうだ! 今はドギマギしているところではない! 探りを入れなくちゃ! 僕の事なのに、仁の方がよっぽどしっかりしてるや…… ちゃんとしなくちゃ!” そう思うと、 「スティーブは何をしに街へ? 今日の日本語のクラスはお休みでしょう?」 僕が尋ねると、 「そう、そう、言うの忘れてたけど、 今日は日本語クラスの英語圏生徒の数人と 英会話のクラスのボランティアに行く予定なんだ!」 そう言ってスティーブは携帯で時間をチェックすると、 「あ、待ち合わせに遅れそう! じゃあドクター、又後でね!」 弾けるような元気な声でそう言うと、 慌てて駆けて行って、みるみる間に見えなくなってしまった。

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