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2-2 意外な再会

 知らない街の宿に着く…以前来た時は来なかった場所。  何故?  道中で聞いたけど、リシェールは今は王になっているらしい。  そう聞くと聞き辛いけど、気になる事が一つある。 「えと…サフィは?」 「……今は公爵として遠い地で仕事をさせて、城からは離した。」  やっぱり口が重そうだった。  サフィ…サフィーニは、リシェールの弟で……リシェールに兄弟以上の感情を抱いていた。  狂った時間は戻ったけど、サフィの秘めた想いを知ってしまったら一緒に居られないだろう。  部屋に入り扉が閉まると、リシェールが泣きながら抱き付いて来た。 「り…リシェール!?」 「御免なさいユズキ!有難う!ずっと言えなくて……私は酷い事をしたのにっ!」  一年経ってるのにずっと思っててくれたんだ。  苦しかったろうに…。  僕はリシェールの背中を撫でる。 「あれは…むしろ僕の後始末みたいなものだったし…。」 「一応涼一さんに聞いた。でも、この世界で入れ替わりがあると…私は知っていたのに……言ってしまった…ユズキに『替わって』と…。自分の意思で…。」 「それもアレク様の力が無ければ起こらなかった…。大丈夫、平気!」  ね?と笑顔を見せる。 「それに此処には来た事が無いから、リシェールに逆に力を貸して欲しい。」 「ユズキ……。」  まだ泣きそうだったから、リシェールの背中に回した腕に力を込めた。  その時…いきなりドアが開く。  男の子と抱き合ってる所が見られちゃう!  BLゲームだからいいのか?  どっちにしろ突き放すなんて出来ないのでそのままでドアの方を見る。  そこに居たのはぽかーんとする赤毛のお兄さん…誰?  知り合いだからノック無しでドア開けたんだろうし…。 「リシェール…これは一体?」  やっぱりリシェールの知り合い。  でも二人で宿? 「っ…ヨウタ。彼はユズキ。」  僕を放しハンカチで顔を拭きながらリシェールは、赤毛の彼に答える。  ヨウタ…?日本人っぽくない? 「ユズキって、あの、俺とおしっこし合った!」  時間が止まった……リシェールは絶句してる。  外見が違うけど、もしかしなくても……。 「じ、ジェイさん?」 「そうそう!こっちがほんとの姿なんだよね。」  相変わらすフレンドリーな彼。 「松本陽太、宜しくねー。」 「芹澤柚希です。えーと、その姿は?」 「んー、あの姿はあくまで主人公だったから。元の姿に戻りたいなーって思ってたら、ある時ある出来事があったと思ったらこの姿…元の世界の俺の姿になったってわけ。」 「ある事?」  長くなりそうなのでベッドに座らさせて貰った。 「そ…その前に…おしっことは…?」  あー、気になるよね、もう!  リシェールは言い辛そうだったけど、誤魔化せない感じて僕とヨウタさんを交互に見遣る。 「つ、連れション!」  駄目だ、ほんとの事を言うのはハードルが高過ぎる!  そもそもあれはリシェールの身体であった事じゃないか!  本人に言える訳が無い!  大体、時間が戻った今は無かった事になってる筈!  僕は咄嗟に大声で言い、ヨウタさんに「余計な事を言うな」と強く睨んだ。  さすがに空気を読んでくれたらしく、ヨウタさんも「そうそう。」と言ってくれた。 「そう言えばヨウタさんは帰れなかったんですか?」  僕とアレク様は元の世界に戻れたのに、多分残りの日本人は彼だけだと思うんだけど。 「俺は死んでここに来たからね。でも元々リシェールと居たかったから万事OKってやつ?」  彼自身がいいならそれでいいのかな?  一番聞かなければならない事が残った。 「二人は何故此処に?僕が知らない街だと思ったけど。それに二人で宿に居るっておかしくない?」  リシェールは国王になった。  二人だけで宿に居るなんてありえなくない?異国で?  リシェールは目を伏せて言う。 「ルキウス国が滅ぼされた…。」  そんなはず!  だって僕だって気になるから、3とかオンラインでルキウスがどうなってるか、設定を聞いてみた。  ルキウスは常に平和だったはずなのに!  それを二人に伝えてみる。 「私のせいなんだ…。」  リシェールは泣くことは無く、辛そうに呟く。  多分国の責任者として泣いてはいけないと思ってるのだろう。 「違う!リシェールは悪くない!あいつが……っ!」 「僕にわかるように説明して貰えますか?」  多分ヨウタさんの方が冷静に話せるだろうと思って、彼に目を遣り問い掛ける。  それは思わぬ内容だった。 「ある日いきなり『リシェールを嫁に』と望む奴が侵攻して来た。勿論リシェールは俺のだから、リシェールは当然断った。」  あ、そこ関係進んでたんだ。と思ったけど話の腰を折る場合では無いので、どうにか問い掛けを踏み止まる。 「そうしたら、国に全体攻撃……何の魔法か知らないけど、俺とリシェール以外は全滅した。多分強めの光属性を持ってたから生き残れた。その時の魔法で俺は今の姿になった。」 「私自身の事など気にせず、申し出を受けていれば……。」  僕は落ち着いて情報を整理する。  口を開こうとしたその時……。 「大変です!魔物が押し寄せて!」 ドアが開くといきなり大変な事に。 「大体事情はわかった。今は敵をどうにかしないと!」  二人がどうするかわからないけど、僕はすぐに外に走った。

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