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2-1 リシェールとの再会

 テイムした(勝手に仲間になった)ドラゴンを撫でていると、浮かない顔のアレク様がプログラムをホログラムみたいな物で眺めていた。  僕が声を掛けても助けにならないだろうなと思って様子を眺める。  僕の視線を感じたのか、アレク様はすぐに気付いて僕を抱き締めた。 「ゲーム中に済まないな。」  そう、今は二人で『ロイヤル・ラブ・オンライン』の中に居る。 「リシェに危険が及ばないか確認していた。」 「どうしてそんなに厳戒態勢みたいになってるんですか?」 「……おかしなバグが発生して、消しても消しても発生しているらしい。」 「また姉さんが頼んだんですね?」 「頼まれたがリシェを護る事になるから、こちらから願い出たんだ。」 「すみません…。」 「俺が望んだんだ。」  そう言ってアレク様は頬にキスしてくれた。  姉さんはこのゲームの開発者だから、コンピューターに精通してるアレク様に何かと依頼する。  勿論報酬は発生してるらしいけど、アレク様は元々お金持ちで、自分でも既に会社を幾つも経営してるから、本当は報酬は要らないらしいけど…。  ゲームを止める程のバグではないらしく、チェックしながらプレイ状態らしい。 「…ドラゴンが乗せてくれるそうですよ。」  息抜きになるといいなと思って誘ってみる。  因みにこのドラゴンは、僕の『魅了50』姉さんが僕に与えた設定値で、前よりはだいぶ下げて貰ったんだけど…に惹かれてやって来た。  前は99に設定されて、魔物が全部味方になってしまってレベル上げが出来なくなってしまった。  姉さんも僕を心配しての事らしいから、あんまり怒れないのがね…。  ドラゴンでの移動は楽しい。  アレク様と二人で乗っている。  ドラゴンはデカイから二人でも全然余裕だし。  このゲームではさすがに空は飛べないから、空を飛ぶ視点で見れるのは爽快だった。  だいぶ奥の方まで来た時に……。 「アレク様この先はまだ造って無いんですか?」 「いや、そんな筈……。」  前方が何も無いみたいな状態になっている。  てっきり仕様だと思ったら違うらしい。  異変を感じたので降りる事にした。  落ちたら危ないからね。  すると降りてすぐ、視界が真っ白に包まれる。 「リシェ!」 「あ、アレク様っ!!」  全く周りが見えなくなって、慌ててアレク様の方に手を伸ばしたけど何も掴めなかった。 「霧…だよね?」  落ち着いてじっとしてれば晴れると思って、一歩も動かずに居ることにした。  何回かアレク様を呼んでみたけど、返事も、居る気配すら感じなかった。  僕でさえ思い付いた「動かない」という手段をアレク様が気付かないわけがないから、分断されていると思った方が良さそう…。 「まだ晴れない……。」  一時間は経過しただろうか、未だ同じ状態のまま。  システムの時計がある筈なのに、システム自体が開けない。  GMコールもログアウトも出来ないと言う事で。  動いても悪化しかしない気がするけど、動かないと事態は変わらないのかという気がしてきたので、目を閉じ気配を探ってみた。 「左の方に人の気配…?」  気配は探れても、相手が良い人間かどうかまではわからない。  けどここに一人で居るよりは…と思ってそちらに歩いていく。  すると向こうも近付こうか迷っていたのか、僕が動くと近付いて来た。  剣の束に手を掛ける。  相手も剣を抜く音がしたから。  その時霧が晴れていった。  そこに居たのは、見憶えのある姿…金髪、紫色の瞳の……。 「リシェール!?」 「ゆ、柚希さん!?」  どういう事だろう、彼は異世界の人間で、僕とそっくりな顔だけど瞳の色が僕とは違う。  そこで見分けるくらいにそっくりなんだけど、それもそのはず。  姉さん曰く『僕をモデルに創ったゲームキャラ』なんだそうで。  でも異世界では『僕の前世の直系ではない子孫』だからだった。 「柚希さんはまた誰かに喚ばれたの…ですか?」 「ユズキでいいよ。敬語も要らない。」 「ではそのように…。」  『また』喚ばれたって、可能性をひしひしと感じ始めた。  だってここ異世界って事だよね。  挙げ句アレク様と分断されてる時点で、僕に関する何かって事だろうし…。 「ユズキ、夜も遅いし宿で話さないか?」 「宿……?」  城遠いのかなここ?  ひとまずリシェールに着いて行くことにした。  あれから一年経過してるのが、リシェールが一纏めに伸ばしている後ろの毛の長さで実感した。

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