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EX12 LOVE LESSON 2月14日 バレンタインデー1より 2A
https://fujossy.jp/books/23258/stories/493931
side:リシェ
リシェールへのバレンタインでお返しに渡した『何でも一日お願いを叶える券』を実行するために、リシェールに呼ばれてルキウス王国にやって来た。
相変わらず平和で安心した。
「まずは庭園へどうぞ、リシェ様。」
「…やっぱりそれで呼ぶんだ…。」
空笑いながら連れられて庭園へと足を踏み入れた。
「こちらに座ってくれ。」
椅子を引いてくれたのでそこに座ると、お菓子と紅茶が用意されていた。
「うわー、凄いね。」
何段にもなったトレイにお菓子が乗っている。
「三時になるから丁度良い時間だと思って。」
「うん、有難う。でもこれじゃ僕が接待されてるんじゃないかな?」
「お茶に付き合って欲しい。」
「ああ、そうか。それじゃ遠慮なく。」
リシェールが嬉しそうだから拘らない事にした。
紅茶が全然冷めて無かった…優秀な部下が居るらしい。
「こういうお菓子ってあんまり食べる機会が無いから嬉しいな。」
いただきますしてから紅茶を飲む。
「紅茶ってあんまり詳しくないけど、これは美味しいね。リシェールがいつも飲んでるやつなの?」
「そうだ。と言うことは私と柚希は味覚も一緒なのだな。」
凄く嬉しそう。
向こうでは滅多に見られない表情をしている。
リシェールは護ってくれたりするけど、僕と同じ十六歳なんだなって気付く。
お菓子はマカロンとかなかなか買ったりしない物ばかりで、堪能させて貰った。
次に行ったのは訓練所だった。
「無理の無い範囲で、リシェ様の魔法を色々見せて欲しいのだが…。」
改めて言われると緊張してしまう。
標的があったので、取り敢えず消費の少ない攻撃魔法を標的に向けて放ち、幾つか見せた。
リシェールは目を輝かせてから使おうとしてみるけど、やはり発動魔力が足りない様子だった。
少し沈んでしまった。
「あ、そうだ!これならいけるよきっと!」
僕はリシェールに魔力底上げの補助魔法を掛けてみる。
何とかリシェールは一番消費の少ない光弾を使う事が出来た。
満足そうな顔をしてくれたので安心した。
「逆にリシェールの剣技見てみたいな。」
言うとリシェールは恥ずかしそうにしながらも腰のレイピアを抜いて、稽古用の標的に突きを連射した。
「すっごい、剣が見えない…。」
「リシェ様を護りたくて頑張った。」
やっぱり僕のためなんだ。
あっちでは格闘技をと、色々僕の為に学んでくれてるのが申し訳無い。
「有難う、嬉しいな。」
謝るとまた気を遣わせてしまうので、心からお礼を言ったら抱きつかれた。
解放されると手が取られて、次の目的地に向かう。
辿り着いたのは城下街だった。
そう言えばこっちに来た時って殆んど城に居るから余り来た事が無かった。
商店を周り、あっちでは見られない武器・防具屋とか、道具屋ではこっちならではのデザインの道具なんかを物珍しく見たりして、街を楽しんだ。
個人的にはこっちオリジナルのジュースが美味しかった。
「ん?」
街外れにある空き地が気になった。
ここだけ空いてるのが不自然な気がして。
「リシェール、ここには何があったの?」
少し言い辛そうな顔になるが、すぐに口を開く。
「…ここはかつて光の神殿があった。」
「それって…。」
「リシェ様を殺す真似をした宗教など置いておけない。だから追い出した。」
「そっか、アレク様に聞いたんだっけ…。でもそんな事したらリシェールが危なくならない?」
「大丈夫、自衛なら割と強くなっている自信がある。それに、リシェ様の結界があるから奴等は入って来れない。」
「ならいいけど、無茶しないでね。」
僕からリシェールをそっと抱き締める。
少し頬を染めて頷いてくれた。
「次が最後だ。たくさん付き合ってくれて本当に感謝する。」
「僕の方が楽しませて貰ってるよ。」
二人で笑い合う。
「え?」
最後と言われた場所は、リシェールの寝室だった。
「添い寝すればいいかな?」
「それは後で。ここに来て欲しい。」
言われて足を運んだのは鏡台の前だった。
「ん?……あっ!」
思い出した。
ここはリシェールと初めて逢った場所だった。
「あの時、絶望に打ちひしがれていた時に、鏡の向こうのリシェ様が救ってくれた。私はあの時の感謝を一生忘れない。」
「あれは…むしろ僕が…。」
「救ってくれたのはリシェ様なのは間違い無い。」
ぎゅっと僕を抱き締めるリシェール。
「そして再び元に戻った時は……今度はまた違う事で絶望した。リシェ様にはもう二度と逢えないのだと。あの時は恥ずかしいが、毎日のように泣いてしまっていた。『せっかく逢えたのにもう逢えないなんて。』と。心が渇いてしまった感じで日々を過ごしていた。理由はツインソウルだからだというのを知らされて、リシェ様と離れた苦しさに納得が行った。」
「御免ね……一年もそれを知らなくて。」
離れた一年間そんな思いで過ごしていたなんて。
偶然また逢う事が出来たけど、逢えなかったらどうなってしまっていたんだろうって。
「だから今は、ほぼ毎日逢えるだけで私は幸せを貰っている。だから、その分も含めて恩を返したいのだ。」
恩なんて感じなくていいのに。
充分過ぎる程良くして貰ってるって思うんだけど、リシェールからしたら違うんだろう。
「これからも一緒に居てね。」
笑顔でそれだけ告げると、ベッドに引っ張って行かれて、抱き付かれてそのままベッドに二人で倒れる。
「今日は一日有難うリシェ様。お返しには充分過ぎるくらい幸せだった。」
「僕が楽しんじゃった感じもするけど、リシェールが満足してくれたなら良かった。」
「ああ。だから最後のお願いは、添い寝で一緒に寝て欲しい。」
「あ、結構な時間になってるね。うん、心地良い疲れも感じてるし、このまま寝ちゃおう。」
「明日は体育もあるしな。」
「あー……。」
僕が溜息を吐くと、リシェールが軽く噴き出した。
「大丈夫、全てから私が護るから…。」
「有難う、頼りにしてるよ。」
リシェールが頷く。
「お休み柚希。お陰で気持ち良く眠れる。」
呼び方を変えてくれるとようやくほっとした。
それに気付いたようでリシェールが笑う。
「お、お休み!」
恥ずかしさを誤魔化す為に、リシェールの頬にお休みのキスをした。
リシェールは嬉しそうに微笑を浮かべると、唇にキスをしてきた。
少しして唇が離れると、お互いしっかり抱き合って、ほぼ同時に眠りに就いた。
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