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EX23 追憶

(少年王子第三章第二話以降の出来事です) side:涼一 「……っ!」 ミスった…俺とした事が! やっと出逢ったと言うのに、まさか俺の前世の記憶がロックされていたとは…。 異世界を経由した事で今記憶が戻ったが、親殺しのパラドックスとやらは過去の自分自身にも該当するわけだ。 俺は過去の自分を殺そうとしていたんだ。 柚希を置き去りにしてログアウトさせられてしまった。 もうあっちに戻るのは無理だろう。 リシェの記憶が無い柚希はただの人間だ、心細いに違いない。 こっちで俺に出来る事。 まずは柚希を探して、戻れていないか確認しなければ。 『芹澤』と柚希は名乗った。 確かあのゲームのクレジットに『芹澤美月』という名があった。 きっと関係者だろう。 すぐさま俺はゲーム会社に連絡を取る。 俺の仕事の関係で、俺が名乗るとすぐに電話を回してくれた。 「鷹宮涼一君ね。貴方をゲームキャラのモデルに使ったクレームかしら?」 やはり俺だったのか…。 クレームも言いたいが今はそれどころでは無い。 「俺は『柚希』という子を探しているんです。」 「……柚希とどういう関係?」 声に警戒が混じる。 まあそうなるな。 「信じて貰えないかも知れないが、俺は前世で柚希と恋人同士だったんです。」 率直に言うしかない。 何となくこの女性は嘘偽りが通用しない気がした。 「……貴方、アレク君で間違いない?」 「っ…!?そう、です。」 何故、この女性は何処まで知っているのだろうか。 柚希が口にするわけが無い。 柚希の『リシェ』としての記憶は戻っていなかったのだから。 「動揺させちゃった?リシェール…涼一君の言うところの『リシェ』に願われたからね。『アレク様ともう逢えなくなってしまう…辛い、苦しい。助けて姉さん、前世の記憶を全て消してほしい…。』って…。」 「自害した罪…。」 リシェの傍に落ちていた契約書。 どんな契約なのか容易に想像が付いた。 リシェは俺への愛を貫く為に自害したのだと。 俺が闇魔法を使わない事を公言などしていなければ、契約など闇魔法なら破棄出来ていたのに。 リシェの死は俺のせいだったのだ。 そしてまた、リシェの記憶が無いのも、俺のせいだった……。 自分を責めそうになるのを堪えて通話に集中する。 後悔など後でいくらでも出来る。 今はリシェを、柚希を救わないと。 「記憶を司っていたのは、女神ファルセアでしたね。」 「流石に頭の回転速いね。」 リシェは名前の通り…あの金色の瞳も、本物の『光神』だったという事か。 姉であるファルセアに愛され、大切に、苦しまないようにと記憶を消してもらっていた。 大体把握した俺は、一番望む言葉を口にする。 「柚希に逢いたい。」 「…わかった。会社の場所はわかるわね?」 通話を切ると急いで美月さんの居るゲーム会社に向かい、家の場所と鍵を託された。 初めて会った美月さんは、リシェにかなり似ていた。 教えてもらった柚希の部屋の扉を開けると、ベッドの上には泣いている少年の姿。 すぐに向けられた殺気にどうにか動揺を抑えた。 確かに柚希に間違いないが、顔付きが違う。 俺が死ぬ程見た『ゲームのリシェール』だな、と。 リシェールに一通り話し、ついでにリシェールに関する事でも話そうとした時、突然リシェールが意識を失った。 入れ替りのタイミングかも知れないが、必死に呼び掛けた。 次の瞬間……目を開いたのは間違い無く、俺が永く求めていた『リシェ』の姿。 髪や瞳の色は違うが、俺の…『柚希』……。 俺は涼一としては、産まれて初めての微笑を浮かべていた。 おまけ 「涼一さんは…どうして僕を抱いてくれないんですか?」 頬を染めて柚希が上目遣いに瞳を覗き込ませる。 「…いいのか?」 生唾をゴクリと飲んでから訊ねる。 「はい、僕は元から…涼一さんの物でしょう?」 当然柚希とヤりたい。 再会してから毎日逢って、外デートしたり、主に俺の家が多いが、互いの家で過ごしたりしていた。 ただ、柚希としては行為の何もかもが初めてだから、距離感を測っているとか…ヘタレっぽいな。 柚希が誘ってくれるなら…! 「柚希…っ!」 「涼一さん…嬉しい…。」 抱き締めてベッドにそのまま押し倒した……。 かなり濃厚なセックスをした。 夢の中で……。 深く溜息を吐いて頭を抱えた。 今日逢った時こそは! 「涼一さん、いつも色々な所に連れてってくれて有難うございます。」 今日はボウリングに来ていた。 柚希は自分でも言うだけあって、かなり運動神経が悪い。 そういう所も可愛い。 柚希の手取り足取り腰取りしてコーチしながら会話する。 「そういえば、そろそろ俺にはため口にする気は無いか?名前も呼び捨てでいいし。」 「ため口……。呼び捨て…。」 柚希はしばし考え込むと、俺へと瞳を覗き込ませてくる。 胸がドキリと鳴ってしまう。 「ため、口は頑張りま…る。呼び捨ては、ハードルが高いで…から…。うーんと、僕は前世でアレク様に憧れてたでしょう?だから、尊敬する気持ちは変わってないから、名前はこのままで。流石に涼一様って外で呼ぶのは怪しいから。」 成程、本当は涼一様……いいな、とか思ったが、柚希の言う通り癖で外で呼んでしまったら変な目で見られてしまうからな。 俺は平気だが。 そしていよいよ俺の部屋に! いつも通り柚希を背中から抱き抱えてそのままベッドに倒れ、まずは誘った言葉通りにゲームをプレイする。 ……また今日もゲームだけで終了してしまった…。 柚希が… 「わあー、凄い!」 「そんな事出来るんだ!」 「それはどうなってるの?」 等々、聞き上手、リアクション上手で、真剣に受け答えてしまった結果だった。 きっと今日も…柚希のエロい夢を見るに違いない。 今日の柚希の抱き心地を思い返し、早く本当になるように願いながら、意識を手放した。

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