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第四章 すれ違う心 第1話
宣言通り氷室は、その翌日から不在がちになった。帰宅は日付が変わってからで、朝は優真が目覚める前に出て行く。話すどころか、顔を合わせることもない日々が続いた。
その朝も、目を覚ますと氷室は不在だった。ベッドの隣はまだ温かくて、さっきまでここにいたのだ、と思い知らされる。
何だか切なくなり、優真はシーツに顔を寄せた。すると煙草の匂いに混じって、メンズコロンの香りがした。城がいつも着けているコロンだ、と気づいて、優真ははっとした。一緒に連れて行くとは言っていたが、そんなに長時間一緒にいたのだろうか。
「いいな」
ふと、つぶやきが漏れた。二人は、十年来の付き合いだと言う。城を庇って、指詰めしたとも言っていた。とても入り込めない信頼関係がある気がして、優真はため息をついた。
(やめやめ)
気持ちを切り替えようと、優真は身を起こした。そんなことよりも、氷室の役に立てることは無いだろうか。東郷組との争いは、どうやら長期化している様子だ。街のため、商店街のために尽力している彼のため、優真は何かしてあげたかった。
(そうだ)
優真は、ふと思いついた。『ランコントル』のコーヒーを飲ませてあげようか。お気に入りのようだが、この多忙さでは、飲みに行く暇など無いだろう。粉を買って来て、作ってあげるのはどうだろうか。
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