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第2話

 だが、そう決意したものの、どうしようかと優真は頭をひねった。外出は、きつく禁じられているのだ。仕事帰りも、真っ直ぐ氷室の部屋へ送り届けられてしまうので、寄り道も無理だ。 そこで優真は、一計を案じた。今日は日曜だが、休日出勤があると舎弟らに申し出たのだ。 「お仕事じゃしょうがないっすね」  舎弟らは、顔を見合わせて頷いた。 「何時までです?」 多めに三時間、と答えると、彼らは早速支度してくれた。 「その頃、お迎えに上がりやす。じゃあ、お仕事頑張ってください!」  明るい見送りにやや罪悪感を覚えつつ、優真は社会福祉事務所へ送ってもらった。車が去ったのを確認してから、早足で役所を出る。向かう先は、『わたあめ通り商店街』だ。 『ランコントル』に入ると、いらっしゃい、と明るい声が上がった。この前事務所に来ていた女店主が、笑みを浮かべている。 「こんにちは。今日は……」 「あ!」  注文しようとする優真をさえぎって、女店主は大声を上げた。 「お客さん、この前も来てくれたよね?」 「はい、まあ……。すみません、この前は注文もしなくて」  顔を覚えられていたことに内心驚きつつ、優真は頭を下げた。

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