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第10話

 だが、予想した衝撃は訪れなかった。代わりに優真を襲ったのは、噛みつくような口づけだった。 「んっ……」  氷室のぶ厚い舌が、強引に口内に侵入する。きつく舌を吸い立てられて、優真は思わず顔をしかめた。それなのに下半身には、なぜか熱が溜まっていく。 「もう勃ててんのか」  不意に膝で股間をぐり、と刺激され、優真は悲鳴を上げた。 「口吸われたくらいでこんなにしてるくせに、俺から離れられると思ってんのか?」  そのまま氷室は、優真の腕をつかむと、寝室へと歩き出した。振りほどこうとしたが、彼の力はすさまじく、びくともしない。 「やだ……、止めてください!」  氷室は、無言で寝室のドアを蹴り飛ばすように開けると、優真をベッドの上に引き倒した。体重をかけてのしかかり、優真の服を剥ぎ取っていく。こんな風に乱暴に扱われるのは、初めてだった。 「ひっ……」  あっという間に裸に剥かれ、両手を頭上で縫い止められる。おそるおそる見上げれば、氷室はネクタイを緩めていて、嫌な予感がした。 「や、何を……」  予想は的中し、氷室は優真の両手首をネクタイで縛り上げた。続いて無理やり、躰をひっくり返す。不自由な状態で四つん這いにさせられて、優真は唇を噛んだ。  カチャカチャ、とベルトを外す音が背後で聞こえる。ややあって後孔に、ぴたりと熱いものがあてがわれた。 (――まさか……?)  優真は、とっさに身をよじって逃れようとしたが、間に合わなかった。乾いた蕾に、氷室の鋒が無情にも埋め込まれていく。

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