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第9話
かあっと、顔が熱くなっていく。氷室は、ふっと笑った。
「お前が三百万を払うと言い出した時は、焦ったぜ。まさか本気にしてたとは思わなかった。お前が俺の元を離れるかと思うと……」
「徹司さ……」
「なあ、優真」
氷室は、優真の手をぎゅっと握った。
「前に俺が告白した時、お前は答えられなかったよな。改めて、聞く。俺のもんになって、一生この部屋で暮らす、と約束してくれねえか?」
(一生……?)
思いがけない言葉に、優真は絶句した。氷室は、真剣な表情で優真を見つめている。紋付の着物という改まった服装は、その申し込みをするためだったのか。
(徹司さんのことは好きだけど、でも……)
「僕は、男です」
迷いながら、優真は口を開いた。
「今回は断ったかもしれませんが、あなたはいずれ結婚するでしょう? 立場も立場ですし……」
「俺は結婚なんぞしねえよ」
氷室は、きっぱりと言い切った。
「俺が欲しいのは、優真、お前一人だ」
それでも優真はためらった。城が告げたことはほとんど嘘だったが、氷室が過去に多くの男女と付き合ってきたことだけは、真実だった。氷室自身、毎回その護衛を任せてきた、と口走っていたではないか。自分も、いつかは捨てられる日が来るのではないか。黙り込む優真を見て、氷室は業を煮やしたようだった。
「そんなに俺が信じられねえなら、チンコにお前の名前でも彫ろうか?」
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