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最終話
「はあ!? な、な、何言ってんですかっ!」
氷室のとんでもない発言に、優真は口をパクパクさせた。一方氷室は、良いアイデアだとばかりに頷いている。
「うん、ここはまだ何も彫ってねえから、ちょうどいいな。お前の穴専用ってことで……」
「絶対止めてください! それに、これ以上刺青を増やすのは、体に良くないです!」
半泣きですがると、氷室はにやりと笑った。
「お前がぐだぐだしてっからだろうが……。なあ、優真。お前が思ってるほど、俺はいろんな奴と寝てきたわけじゃねえぞ。親分に、組のために尽くすことしか頭になかったからな。ずっと色恋は二の次だった」
「え……?」
優真は、思わず氷室を見上げた。
「第一、マンションを買い与えるなんて、お前が初めてだ。どうだ、いい加減納得したか?」
「そう……だったんですね……」
何だか考えていたことを全て見透かされたようで、気恥ずかしい。すみませんと頭を下げると、氷室は優真をぐいと引き寄せた。
「まあいい。妬いているお前も可愛い」
氷室の胸に顔を埋めれば、いつもの煙草の香りがした。彼がうながす。
「で? 返事は?」
優真は、顔を上げて氷室を見つめた。
「徹司さん、愛しています。だから、約束します。一生ここで、あなたと一緒に生きていきたいです」
満面の笑みを浮かべたかと思うと、氷室は優真をぎゅっと抱きしめた。彼の温もりに浸りながら、優真は心の中でこう付け加えた。
(今度は、僕があなたの支えになりたい。この街を、商店街を守ってくれるあなたの助けになれるように……)
了
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