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「とんだ先には勇者vs魔王」1
真っ白な光の中、ふわふわっと浮いてた体は、不意に、どしゃっと音を立てて落ちた。
落ちたのは、1、2メートル位かな。死ななかったし。でも、肘、擦りむいた。
「いっ……た……」
触ったら血が出てるし。
……何。
一体――――……何?
――――……。
何この洞窟みたいな所。
いや。見覚え、ある。
……さっきまでゲーム画面で、見てた。
「――――……何だこいつ? 魔王の助っ人か?」
この声は。
さっきまで、画面から聞こえていた、勇者の……声だけでめっちゃエロいと評判の、イケメン過ぎる声……??
「すっごく弱そうだから、違うんじゃない?」
この、ちょっと色っぽい独特の声は。
魔法使いの女の子の声。対象を燃やし尽くすほどの、激しい炎の魔法が得意な。
「とりあえず斬っとくか?」
この、とんでもない事言ってる、ハスキーボイスは、剣士の声。
「おそらく魔王の仲間ではないから、斬る必要はないと思うけど――――……それより、一体どこから?」
冷静で優しい声は、回復などの白魔法を使う、イケメン騎士の声。
ゲーム、やってて、超聞き慣れてた声たち……。
――――……何これ。
夢ですか?
「答えろよ、お前、なんでこんなど真ん中に現れた?」
ど真ん中。……ど真ん中って? なんか引っかかる。
勇者たちは、オレの背後、右方向に、居る。今、オレは振り返って、右側だけ、見てて……。
ど真ん中、てことは。左側にも、何かが――――…… ていうか、この場面が、さっきのゲームの場面なら……。
思い当たった事に、オレが、怯えだした瞬間、勇者が声を上げた。
「おい、魔王。 てめえの助っ人か? 答えろ!」
「そんな者は、知らない」
地の底から響くような、声は――――……。
ゆっくり顔を前に戻してから、恐る恐る、左方向を振り返ってみると。
――――……もう、当然のごとく、そこに居るのは、魔王。
「――――……ひ……」
手をついて、後ずさる。
うわ、こっわ――――…… 近っ……。
マジ、何、これ。
夢なら、たった今、すぐに覚めて!! 早く!!
じりじり後ずさっていると、何かに背中がぶつかって。
「邪魔だ」
振り仰ぐと、勇者が居て。オレがぶつかったのは、勇者の足だった。
――――……てか。そうだ、この人、今から魔王を倒してくれるんだった!
そうだ、よく分かんないけど、ここがオレのゲームの世界なら、もうあと少しで魔王を倒せるところまで行ってた。
とりあえず、状況は分からないけど、一番危険な、恐ろしすぎる魔王を倒してもらおう、邪魔しちゃいけない。
そう思って、ガクガクして立てない足で四つん這いになりながら、そーっと勇者の足元をすり抜けて、その背後に隠れようとした。のに。
「何してんだ、お前。怪しい動きすんじゃねえよ」
ぐい、と腕を掴まれて、軽々持ち上げられる。
ああ、もう、全部怖いんだけど!!
この人も怖い!
早く目、覚めてよ。
思わず願いながら、涙が滲んできて。もうほんと、泣きそうになった瞬間。
「――――……」
一瞬黙った勇者が、オレを見て、ニヤ、と笑った。
何なの、この人。 何で、このタイミングで、笑うの。
すげー怖いんだけど!!
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