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「とんだ先には勇者vs魔王」2
……ちなみにこのゲーム、魔王もかなりのイケメン。
元々は、人間だった男が、欲にとらわれ、妙な力にその身を染め、魔王化した……らしい。細かくはよく覚えてない。確かそんな感じの設定だったような。
魔王が登場したことによって、各地に魔物が現れ、その魔物たちが悪さをするから、各地で色々異常事態が起こり、このゲームの世界は幕を開けた。
勇者は、元々は、ある国の王子。
魔王と互角に戦う事の出来る、聖なる血を引いた王家が治める平和な国だった。
けれど、その国が、突如現れた魔王の情報を掴み切る前に、魔王の奇襲に遭って、滅ぼされてしまった。
乳母が王子を連れて逃げ、成長するまで、結界の中で、ひっそりと育て――――……。
王子は、自らを鍛え、仲間を集め、密かに国を興した。
そこまで行くのには、ゲームとはいえ、かなり苦労した。
カリスマ性があるのと、能力がもともと高いので、良い人材が、勇者の元には自然と集まる。
もちろん勇者だから、人気はあるし人望はあるし、根っから悪い奴では、ないのだけれど……。
ただ、結構性格が――――……悪いとまでは言わないけど、Sっぽいというか……セリフが優しくないというか。
オレは、過去のゲームの、毒気がなくて優しい、一生懸命でまっすぐな勇者の方が好きだなあと思いながら、ずーっとプレイしてて……。
ていうか、こんな好戦的な表情の勇者は、正直、ものすごく、怖い――――……。
ていうか。
……今この人。
オレの、目の前に、本当に居るんだろうか。
オレは、何で。
勇者と、魔王の間に落ちて、座り込んでたんだろう?
やっぱり、夢?
「お前、どっから来た?」
「――――……ゲーム画面の前……?」
「は? 何言ってンの、お前。怪しすぎると、痛い目合わすよ?」
「――――……っっ」
絶対、勇者のセリフじゃない……。
誰か助けて……。
もうほんとに泣きたい。
「ルカ!!」
「ルカ、やばい!!」
「あ?」
「……っ魔王が逃げる!!」
「んだと?!」
オレに目を向けていた勇者が、振り返ったけれど。
時、すでに遅くて。
物凄い叫び声と。砂煙が舞って。
オレが恐怖で、強張っている間に。
どう消えたんだか分からないけれど。
砂煙が収まった時にはもう、魔王は、そこに居なかった。
「――――……静止の魔法、かけてた、よな」
「最後、無理やり振り解かれた感じだよ」
勇者の低い声に、騎士がため息をつきながら、返す。
「もう、あと、少し――――……だったよな……」
勇者は、さすがに力を失ったらしく。
はーーーーーー、と深い息を付いて、その場にしゃがみこんだ。
「――――……つうか。お前、ここまでどんだけ苦労してたどり着いたか、知らねーだろ」
いきなりオレに話を振られた。
なぜ?
…………ていうか。
……知ってます。多分。
多分、ここ、オレが、プレイしてきたとこだよね?
だとしたら、通常よりも、物凄いやりこんで、全部のイベント参加して、苦労して、色んな能力も、端から身に着けて……。
「後少しで、魔王を倒せたっつーのに……」
ほんと。
あと、少しだったはず……。
オレも、そう思ってたから。
「――――……こいつのせいだよなあ?」
勇者が、仲間を振り返る。
ん?…………こいつって、オレですか??
「……ルカが話しかけなきゃ良かったんじゃないのか?」
騎士の声。
「あ? つか、こいつが、突然空中から現れたりするから悪いんだろ」
「ほっといてトドメさせば良かったのに」
「そうだよ、先にトドメだろ。どー見ても害無さそうなそっちをほっとけばよかっただろ」
魔法使いと、剣士の声。
「あんな最終場面でど真ん中に降りてきた奴、気にしないで進めるかよ」
ものすごい目で、睨まれる。
……でも、オレ、多分、悪くないのに。
自分だって、どーしてここに居るか全然分かんないし。
ていうか、もう、夢で、そろそろ目覚めたら、オレ消えるから。
そしたら、もう一度、ゲームのセーブの所からやり直してあげるから……。
早く、目、さめてくれ……。
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