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「町のレストラン」
「何、気に入ったのか、リア?」
剣士が笑いながら言う。
「そーいう意味じゃないよ。でも可愛いなーと思って」
なんか、近くで見ると、すっごい綺麗この人。
長い黒髪、白い肌、大きな瞳。
独特な衣装とアクセサリーに紛れて、ちゃんと見てなかったけど。
めっちゃ美人さんだった。
多分、年は、オレよりは上だと思うけど。
「でもなんか、君、変わった格好してるね?」
ゲームやってた時のまま。
白いセーターに、ジーンズ。
確かに、こんな格好、この世界には無い。
オレからしたら、この人達の格好がおかしいんだけど、
この世界に来ちゃうと、オレの方が、絶対変だ。
……明日、色々連れてってもらった後で、目覚めて、帰れるといいけど……。
と、すっかり、「いますぐ」から、「明日」になってる自分に、ちょっと苦笑い。
というのも、だって、さっきのめっちゃ怖い洞窟じゃなくて、今ここは、大きな町の目の前で、明るい雰囲気が漂ってて、全然怖くないから。
少しの間、ゲームの世界に居るのも楽しいな、なんて思ってる、ゲーム大好きなオレ。
よく考えたら、大好きなRPGの中で、話せて動けて色々見れて、しかも魔法で飛べるとか! パラダイスな気がしてきた。
1日位、満喫してからでもいいなあ~、なんて思うオレは。
綺麗なお姉さんに、可愛いなんて言われて、明日遊びに連れてってくれるといわれて、ご機嫌になっていた。
が。
不意に。
勇者にぐい、と腕を引かれた。
え?
「飯食いに行くぞ。腹減った」
だからなんでこの人は、オレの腕を引いて…というか、ちょっと持ち上げて? というのか。 どうしてこんな風に歩くんだろう。
引かれなくても、別に逃げないのに。
日本では標準体型のオレだけど。
……なんか、もう、勇者と言い、剣士と言い、逞しすぎる。
腕太すぎ……。もう見ただけで、戦う気すらそがれるというか。まあ戦うはずないけど。
なんかひどい扱いで、まるで浮いてるように引きずられようが、逃げようという気すら起きない。
そこ行くと、騎士は、そこまではがっちりではない。
でも、肩幅は広くて、引き締まってて。
この人は、王子様みたい。金髪に白い肌。回復魔法や、戦いの時も補助する魔法を得意とする優しい人。剣も使えるから、トータルバランスに優れた、素晴らしいキャラだった。ダントツ、「美しい」イケメン。
剣士は、もう見るからに、ごっつくて。まあイケメンではある。ごっついイケメン?
黒い髪、太い眉。まっすぐな眼光。
……こんな人に斬られたくない……と思う。
もうこのキャラは、ほんとにまっすぐで、歯に衣着せぬ、直情型。
でも、気持ちが良い位、信用できるタイプ。
勇者は。――――……オレが、めっちゃ色んな事させて、色んな事覚えさせたから、ほんっとに色んな事が出来る、なはず。王子だから、言葉遣い荒くても、なんか、たたずまいが気品があるというか。カリスマっぽいオーラが、漂ってるというか。
なかなか日本では、会った事がないタイプ。
……まぁ、この人達が、本当に、オレが育てたキャラ達なら、そういう人たち。
でもきっと、そう、だよね??
さっきの魔王とのシーンも、オレがやってたゲームのシーンだよね?
ていうか、あの白い光って、何だったんだろう。
爆発したのかな。
熱いとかは無かったけど。
え゛? オレまさか、爆発で死んで、ここに居るとか?
そうすると戻れないんじゃ……。
いやいや、そんなはずはない。
死んだら、ゲームの世界に行くなんて聞いた事ないし。
オレ、寝てるんだよね、きっと。
夢だよね?
この世界で、寝たら、もしかして、向こうで起きるのかな???
色々考えながら、ほぼ浮いてるみたいに、引きずられたまま進み、
町の中の、レストランみたいな所に入る。
もう、オレ、全部に興味しかない。
全部、木で出来た、建物。
現代日本にある物とは、全然違う。
風情があって、超いいなー。
勇者の隣に座らされて、キョロキョロ見回していると。
多分店員の人が、水を持ってきた。
服装とかが全然店員ぽくないから、よく分かんないけど。
「とりあえず酒と食べ物、どんどん持ってきて」
勇者のセリフに、なんていう注文の仕方なんだろう。と、眉を顰める。
こんなんだったっけ、ゲームの世界……。
あー、注文するシーンまでは出てこなかったっけ。
入って、店の中の人と話して、食べる真似事して……。
そっか、注文するとか、ちゃんと食べるとことか。
ていうか、酒飲んでたんだ、知らなかった。
…………ていうか、知らなかったとかそういう話でもないよな。
知る訳ないわ……。
この状況、どう、受け入れれば良いんだろう。
やっぱり、夢としてかな???
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