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「デリカシーが欲しい」
目が覚めたら。昨日の部屋に居て、全裸で、布団に包まれてた。
体はさらさらしてて、綺麗。
汗とか涙とか、その他ぐちゃぐちゃになってたのは、全部、綺麗になってて。
……気を失ったら、日本に戻ってるかな、と、少し期待したんだけど。
戻ってなかった……。
起き上がって、部屋に誰も居ない事を確認した所で、ひとつ、咳が出た。
……あれ。喉、痛た……。
「……あ。……あー……」
声を出してみると、喉が、めちゃくちゃ枯れてる。
……理由はひとつだ。
喘ぎすぎた……。
――――……昨日の、快感、は、強烈だった。
……あれって何?
薬? あの薬が恐ろしいほど効くの?
女の子とした時の快感とか、もうかけらも思い出せない位。
後ろに突っ込まれて、体中触られて、扱かれて。乱暴なキスが。
気持ちイイ、なんて言葉じゃ、言えない位。
与えられる感覚が激しすぎて、もう、ほんとに怖かった。
薬のせいと、思いたいけど――――……。
どっちにしたって、自分の昨日の姿を思い起こすと、恥ずかしさで、死にそうになる。
うう。
顔、熱い。
1人で赤面して、必死でその熱を冷ましてると。
静かに、ドアが開いた。
「――――……」
昨日散々オレを弄った、絶倫男が入ってきた。
何で絶倫かって……だって、ルカは、あの変な薬飲んでた訳じゃなかった、のに。
……なのに、延々オレを――――……。
一体、昨日どんだけ……。
けろっとした顔してる、憎たらしいイケメンに。
眉が寄ってしまう。
「――――……もう昼だぞ?」
言いながら、片手に持ってた布を、オレに投げてきた。
「上から羽織っとけ」
裸の肌に、肌触りの良い布に首と腕を通した。
……なんか、ワンピースみたいな服だけど。
「あり、がと……」
持ってきていたトレイをオレに渡しながら、その声を聞いて、マジマジとオレを見つめてくる。
「もしかして、声、でねえ?」
く、と笑う。
「あれだけ喘げば、そうなるか」
かあっと赤くなったオレを見て、ルカは、くっと笑った。
「とりあえず、水、飲みな」
また、見た目からは何なのか、よく分からない食事と。水と、オレンジジュースっぽい飲み物に目を落とす。
この世界、オレンジ、あるのかなあ…。
とりあえず水を飲んで、乾ききった喉が潤って、ほっとしてると。
「どうだった? オレに抱かれるの」
そんな風に聞きながら、ルカが、オレのベッドの端に腰かけた。
「――――……っっ」
……そんな聞き方って、ある?
デリカシー無い。……まあ無いのは、もう、知ってるけど。
「まあ聞かなくても分かるけど。死ぬほど良かったろ?」
「…………っ」
「ぐちゃぐちゃに乱れてたのは、清めといたから」
「清め…る?」
「魔法。お前の世界には、ねえの? 知らねえ?」
「魔法、は知ってる……でも、オレの世界の人は使えない」
ふうん、と呟いて。ルカはオレを見つめた。
「清める魔法つーのは……まあそのまんま。 体の中も外も。一瞬で綺麗になる」
昨日死ぬほど中に出されたもんな。
便利だなあ……魔法。
……そんな魔法、ルカに覚えさせたっけ……?
デフォルトで覚えてた魔法かなあ。オレ、使わなかった気がするけど。
ていうか。
……ルカって。勇者って。エッチがうまいとか。ほんと、無い。
いつそんな事、やってたんだ。魔王退治に、邁進してたんじゃないのか。
そんなエロイ勇者が居るなんて、想像もしなかった。
てことは……あれ? 違うゲームの主人公たちも、清い顔して、色々……。
いやいやいや。違う。きっと、ルカだけだ。
ぶんぶん、と頭を振ってると。
「何してんだ、お前」
言って、ルカが、クッと笑い出した。
笑いながら、ルカはオレの方を向いて座り直すと、オレが足の上に乗せてたトレイを持ち上げて、自分の足に乗せた。
「食わせる」
「え?」
スプーンに……あ、スプーンもあるんだな。うん。やっぱり箸は無いのかな……。
とにかく、スプーンに食べ物を乗せて、オレの口元に近付けてくる。
「なに……?」
「餌付け」
「――――……」
オレ、動物じゃないんだけど。
そして、あーんとか、恥ずかしいんだけど。
「お前あれだけ昨日乱れといて、食べ物食う位恥ずかしいとか、言わねえよな?」
「……っ」
……だからっ。
デリカシーが無いんだよ!!! もうっ!!
逆らうのも面倒くさい……。
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