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「優しいかも」

「……何?」  視線を感じたらしいルカが、ちら、とオレを見やる。 「……何か……ちゃんと、考えて、くれるんだ、と思って」 「当たり前だろ。オレは、オレのものには、基本、優しいんだよ」  ……そう、だろうか……。  心の中ではひたすら疑いの眼だけど。  なんか、何となく、気持ちが落ち着いてきた。  というのか、状況がやっとちゃんと整理して、納得できて来たというか。  ――――……とにかく、何でか知らないけど、ルカはオレを、自分のものにしたいらしくて。  オレは、ルカの力が、色んな意味で必要で。  ……もう。お互いにとって、それがいいなら、もう、ここにいる間は、それでいい。  もう。割り切って、諦めよう。  オレはとにかく、ここで生きれるように、ルカの力を利用させて貰うし。  対価が、オレの体……っていうのが、ほんとに、よく分からないけど。  色々考えながら、自分を納得させていると。  ルカが、眉を寄せながら、視線を落として、ため息をついた。 「――――……お前は知らねえだろうけど……言い伝えだと、魔王を倒せば、魔物も消える筈だったんだよ。そしたら、この世界、魔物の被害で死んだり怪我したりする奴らが居なくなって、もっと自由に移動できて栄えていく、てなるはずだったからな――――…… 昨日のは、ほんと……大失態だ」 「――――……」  うう。オレ、それ、知らなくない。 よく知ってる。すごくよく知ってる。  そうだよね……散々苦労して。(オレが必要以上に苦労させて)。あそこまで、たどり着いたのに。  あんな形で、逃げられちゃって……。  また、隠れた魔王の居城探しから、再スタートなんて……。  それもこれも……オレがあんなど真ん中に落ちなかったら、ルカがオレに気を取られなかったら、きっと倒せてたんだろうけど……。 「……」  しょんぼりしてると、ルカがトレイに乗ってた、赤い実の皮をむいた。 「食べてみろ?」  唇に押し付けられて。口を開けると。 「あまい……」 「チョコの実だ」 「……ちょこの実??」  なんかこれ。果物なのに、 チョコレートみたい。  しかも名前がチョコの実だって。 「これ、木とかになってるの?」 「あぁ。そこら中になってるぞ。育てやすい果物で、よく子供がおやつにたべてる」 「オレも取りに行く。めっちゃ美味い」 「――――……靴が、先な。あとこれ、子供のおやつだからな」  ぷ、と皮肉気に笑いながら、ルカが言う。 「分かってるよっ」   答えると、またクッと笑う。 「――――……あー。そういや……昨日、魔王逃がしたのお前のせいだからとか言ったけど。別に、お前だけのせいとは思ってねえよ」 「……え?」 「気を取られたのは、オレのせいだから」 「…………でも昨日、逃がしたのはオレのせいだって言ってたじゃん。魔王を倒すまで、この鬱憤晴らし付き合えとか…言ってたし」 「――――……昨日は、失態にショックすぎて、お前のせいにしたかったっていうのもあったし……まあ、そう言えば、お前簡単にOKするかなーと思ったのもあったけど」 「………………っっ」  この。  ……腹黒勇者。 「ま、お前が落ちてこなかったら、あんな事になってねーっつーのはあるけどな?」  ジト目で睨んでるオレに、ルカはおかしそうにクスクス笑った。   「ま、自分の意志で落ちてきたんじゃなさそうだし。――――……つか、お前、落ちてくる前は、何してたんだ?」 「……部屋の中で……」  部屋の中で、ルカ達が出てくる、ゲーム……。  ゲーム……って分かんないよな。 これに関しては、やっぱり、言わない方が良さそう。 「部屋の中で、テレビ、見てて」 「テレビ?」 「――――……こっちには、無さそうだけど。 色んな物が映るテレビていうものがあって……」 「ふーん……で、いきなり、白い光にさらわれたのか?」 「うん。急にテレビが白くなって、光って……」 「――――……何とも言えねえな。いつかオレもそうやって、どっかに飛ぶ可能性があるって事か?」 「――――……それは、分かんない……」  ふうん、と息をついて。それから少しして、ルカがふ、と笑った。 「魔王を倒してからなら、面白そうだから違う世界に行くのも別に良いけど。倒してからでないと、オレはどこにも行けないな」  魔王を倒すっていう、使命に関しては――――……すごい、マジメなのかも。  やっぱり、主人公、なんだな。うん。  にしても。 「……オレ、面白くないけどね……」  ……あ。でも。  ゲームの世界だから、ちょっと、楽しいっていうのはある……。  夢だとは思ってるけど、  夢にしては、感覚とかは、リアルで。  すごく不思議。 「ほら」  また、チョコの実を口に入れられる。 「色んな味の実がなってるし、自分の好きな食べ物、見つけろよ」 「うん」  なんかこうして、話してると。  ……やっぱりこの人、意外と、優しいかも、しれない……。

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