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「良い奴じゃなかった」

「ほら」  また口に入って来た甘い味に、ついつい笑ってしまう。  だって、美味しい。 「とりあえず、今持ってきた中では、それが一番好きみたいだな」  そんな風に言って、ルカが笑う。  笑んだまま、また皮をむいてくれてるので、じっと待ってる隙に、ルカを観察。  黒い髪。意志の強そうな瞳。整ってて、凛々しくて、文句なしのイケメン。    動作は……綺麗。さすが王子様なんだろうなあと思うけど。  ただなんか、やっぱり城の中で何不自由なく育った「王子様」てよりは、色々大変な中ここまで成長してきた「王子様」だからなのか。ちょっと? いやかなり? 荒々しいとこや、性格ひねてるとこがある気がするけど。でもその分、逞しいし、頼りになる。……オレ、めいっぱいイベントさせたから、めーーーっちゃ成長してると思うし。うん。  背も高いし、逞しくて。声は、あの、超人気の声優のだし。  まあ……全体として、超良い男、なのだろうけど。  昨日の出来事のせいで、それを素直に認められないオレが居る。    ただ。こんな風に穏やかだと、昨日の事、夢だったみたいな気がしてくるけど。 「ほら」  ぱく、と実を食べさせられて、もぐもぐ食べていると。  くっと笑いながら。 「もう飯、いいか?」  そう聞いてきた。頷くと、コップを手に取ったルカが、オレにそれを渡してきた。 「このジュース、飲んでみな」 「うん」  素直に頷いて、こく、と飲む。  オレンジジュースみたいな見た目なので、完全にオレンジジュースの味を想像しながら飲んだ。  そしたら。 「……っにっ、が……っ!!」  見た目からは想像もできない位、苦い。 「何、これ……っ」 「リアからの差し入れ。栄養たっぷりのジュースだと」 「……っ」  リア……。  そうだ、あの人、変な黒魔法使う人だった。  これが変な黒魔法で出来上がったものかは分からないけれど、  どっちにしても、まずすぎて、絶対無理。 「つか、飲めよ、体に良いって、言ってたから」 「…もう、いらな」 「リアの好意、無下にすんのか?」  低い声で言われて。  ……だって、これ、飲んだら、絶対、体悪くしそうな味なんだもん。  これ以上飲んだら、食べたもの、吐いちゃうかもだよっっ。  そう思って、ジュース片手に、許してもらえないだろうかと少しの間ルカを見つめるけど、リアの好意、という言葉に諦めた。はあ、と息を付いて。  もう、匂いがしないように、一気に飲んじゃおう。  心を決めて、ぐい、とあおって、喉に流し込んだ。  完全に、喉の奥に流し込むように飲み込んだって言うのに、口の中に残った少しの味の、何とも言えない苦さに、むせる。 「――――……良く飲んだな」  クッと笑い出す、ルカ。  何言ってんだよ、飲めって言ったじゃんか! 「だっ、て、好意が、とか……っ」  あまりに強烈な味にもう涙目で、笑ってるルカを睨むと。  ルカは、オレの手からコップを取って、トレイにのせ、ベット脇のテーブルに置いた。 「これな、朝飯ん時にリアが出して、オレら3人、一口でやめたやつ」 「……っ」 「すげえな、お前。よくこんなもん、飲めたな」 「…………っっっ」  ……ひどすぎる。  …………全っっ然、良い奴じゃなかった。  ゲホゲホ。  むせてると。  不意に、すぐ近くにルカの気配を感じて。  咄嗟に顔を上げようとしたら、何だかよく分からないままに、いきなり抱き込まれて。 「なに……ん、ン……っ?」  唇を奪われて。遠慮も無く、入り込んできた舌に、口の中を舐められた。

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