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「独占欲??」
意地悪なルカの、子供みたいな意地悪を回避しながら、色々つまんで、食べてみる。
……味が素朴なんだよねー。しょうがないのかな。
まずくはないんだけど。ていうか、美味しいは美味しいんだけど……。
ハーブみたいなのとか。
ニンニクとか、唐辛子っぽいのとか。それくらいならありそうな気がするんだけどな。
塩としょうゆっぽい味はするけど……酒はあるし。
バターとかは? あるのかな?
「ルカ」
「ん?」
「もしさ、ルカの城につくまで、オレがここに居たら、さ?」
「……ん」
「オレ、料理、したい」
言ったら、意外そうな顔で、ルカがオレを見つめた。
「料理? できんの?」
「うん。母さんがパティシェでさ。料理もすごく上手な人でね」
「ぱてぃしぇ?」
「あーと……お菓子を作る職業の人。オレ、いっぱい教えられたからさ。作るの好きなんだ」
「へえ……」
「まあでも――――……料理するのが好きとか、人に初めて言ったんだけど」
「ふうん? 何で?」
「何となく……? 無難にゲームとか言ってた方が、楽だったし……」
「ゲーム?」
「あー……んーと、ゲーム」
テレビゲームは無いから……。
「……カジノ、あるでしょ? ここ」
「ああ」
「色んなゲームとか……」
「カジノ好きか? 今度行くか?」
「え。うん、行きたい!」
やったー、行く行くー。
喜んでると。ルカはふ、と笑いながら。
「んで? ――――……お前は、料理がしてえの?」
「うん。 ただ、材料とか、どんなのがあるのか色々揃えてみてから……」
「いーよ、揃えてやる」
「ほんと?」
「オレに作ってくれるんだろ?」
「――――……」
……まあそっか。今オレが作って、食べてくれるのは、ルカとここに居る皆だな、と思って。うんうん、と頷くと。
「城にも料理人が居るから。色々相談していーよ」
「うん」
――――……なんか。
ちょっと楽しみになってきた。
この世界の材料で、茶色以外のキレイな食べ物を作ってみたい。
……できるのかな、なんておかしくなってしまうけれど。
もう少し、とか、買い物終わるまでとか、明日までと言わず。
1か月くらい、ここに滞在してもいいような気がして、ワクワクしてしまう。
「ソラの父親は?」
「え?」
「母親の職業がそれなんだろ? 父親は?」
「えーと……整体師」
……整体師なんて居るのかなと思いながら、口にすると。
「せいたいし?」
ルカの反応で、居ないんだな、と分かる。
「……体を整えるっていうか…… あ、疲れた所をね、揉んだりして、楽にするっていうか。分かる?」
「キースが、白魔法で、体の痛みを取ったりできるけど。それか?」
「んー、キースの魔法は分かんないけど……整体は体に触ってやるんだよ」
「触って?」
いまいち分かってもらえない。
「手、貸して?」
「――――……」
差し出された手に、そっと触れる。
「ゆっくり深呼吸しててね?」
整体とかまではいかないけど、父さんに習ったマッサージ。
母さんの手が疲れた時にやってあげてたように、指をほぐしたり、親指や小指の付け根をほぐして。指をマッサージしてから、手の甲を揉んで。そのまま、肘までゆっくり擦る。
「こんな感じなんだけど。どうだった?」
「――――……」
「今右手だけだから、左手と比べると大分違うと思うんだけどな?」
「……なんか、楽になってるかも」
右手を振って、ルカが不思議そうに自分の右手を見てる。
あ、なんか、不思議そうにしてるの、ちょっと可愛い。
思わずクスっと笑いながら。
「左手もやる?」
と手を差し出したら、素直に左手も差し出してくる。
あ、素直。
――――……なんか、ちょっと、初めて、年下っぽく思ったかも。
「オレのこれはマッサージだから、父さんがやってた整体とは違うけど……でも、基本は一緒。 力が入ってるとこを解して、動きが硬くなってる所を柔らかくして……楽にするって感じ……。あ、ルカ、深呼吸、してて」
「――――……」
「息、止めないでね」
「……ああ」
しばらく無言のまま。
マッサージをして。右手と同じように左手を終えた。
ルカが軽く、両手を振ってる。
「キースの魔法の感じとは大分違う」
「――――……魔法だと一瞬?」
「ああ」
そっか。
魔法が有ったら、整体とかいう職業いらないのかな。
でも皆がキースみたいな魔法使える訳じゃないよね?
「何してたんだ? 今、ソラ」
ゴウに聞かれて。
「マッサージっていって……疲れとか取って楽になるんだけど」
答えてから、キースを見つめた。
「キースが魔法で出来ることみたい」
「ああ。疲れや痛みを取る魔法?」
「うん」
「でも、魔力を使わなくても出来るなら、いいかも」
ふ、とキースが微笑む。
「ソラ、オレにもやって」
ゴウがそう言うので、頷いて。
「うん、いー……っ」
いいよ、と立ち上がろう腰を上げた所を、後ろから腕を掴まれて、再び着席。
「えっ???」
振り返ると、ルカが、なんかすごく、苛ついた顔でオレを見てる。
「な、な、なに?? 何なの?」
何でそんな、急に怒ってんの??
「お前――――……」
「……っっ??」
「さっきキスされたんだから、警戒しろよ」
「け……」
警戒?
ゴウを??
た、たしかにキスはびっくりはしたけど…… 別に男だし……。
そう思ったけど、とても言える雰囲気じゃない。
「つか、こんなの、オレ以外にやるな」
こんなのって。
……マッサージなんだけど……。
こんなのって、どういう意味……??
よく分かんないけど、イライラしてるのは分かるから……。
「……ゴウ――――……無理」
ゴウに、ぷるぷると首を振って見せると、ゴウと、この様子を見てたリアとキースも、めちゃくちゃ苦笑いしてる。
ゴウに断った所で、ルカは掴んでいた手を離してくれた。
「――――……???」
……んんんんんん……??
ルカって…………。
「ソラ」
ルカに呼ばれて、悩みまくったまま、顔を上げると。
「ん」
ぱく、と口に何かが入ってくる。
噛んですぐ分かる。
「あ、チョコの実……」
悩んでても、これは美味しい。
ふ、と笑って、味わってると。
さっきまでめちゃくちゃ苛ついてたルカは、もう全然怒ってないみたいに、クスクス笑った。
――――……ルカって。
この町に着いた辺りから、ずっと思ってたけど。
…………独占欲なのかな? よくわかんないけど。そういうの、すごい??
んでもって、何故か、オレにそれを発動してる??
会ったばっかで、過ごしたほとんどがベッドの上だったし。
独占欲抱かれる程、気に入られる理由も何もないと思うから、そんな訳ないよねって、さっきからずっと思おうとしてたんだけど……。
…………?
そうとしか思えない感じだけど……なんだろ。
――――……変なの。
思いながらも。
なんか、楽しそうに、チョコの実をせっせとむいてる勇者が、なんか。
……ちょっと可愛くて。
大きな手が小さな実を剥いてるのを見守ってると、なんか、微笑んでしまう。
……オレも、変なの。
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今日1/5のブログにルカソラの会話小話があります♡
新作ランキング10位に入れてくださってありがとうございます♡
by悠里♡
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