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「意地悪」
「ねえねえ、ソラ?」
「うん??」
ルカと反対隣に座ってたリアに呼ばれて、振り返ると。
「ゴウとキスしちゃったってホント?」
「――――……」
リアの前に座ってるゴウを見ると、べ、と舌を出して、ニヤニヤ笑う。
……うぅ。
確かにしちゃったけど。
ていうか、男とのキスなんて、別に、オレにとっては、ノーカウントって言うか。
正直、完全に記憶の彼方へ、忘れてしまいたい出来事だけど。
「ソラは、男同士って、今まで考えた事もなかったの?」
「うん。無かったよ」
……ていうか、今だって、出来たら、無しにしたいけど。
「じゃあ、ルカとの事、衝撃だった?」
あまりに周りが騒がしいから、リアに耳を寄せないと聞こえない位で。
多分、リアとは反対側に座ってるルカには、何も聞こえてないだろうと思って。
「うん。衝撃……どころの話じゃなかったけど……」
「ふふ、そっか~。大変だったね」
クスクス笑うリア。
大変だったね、て軽いなー。と、笑ってしまう。
「でもさ、ルカって、上手でしょ?」
「――――……」
クスクス笑ってそう言われて。
散々乱された記憶がよみがえって、そういえば、リアにも声、聞かれたんだ、と思ったら。
顔に熱が集まってきてしまった。
「…………っっ」
恥ずかしすぎる……。
「あはは、かーわいい、ソラ。ルカはモテるから慣れてるだろうし、素直に任せとけばいいんじゃない?」
「……リアも、ルカとしたの??」
「あたしは、ルカ、タイプじゃないから、無いよ。でも、まあ王子だしね、そうでなくても、モテるから。 城に帰ったら相手は他にも居るし、ソラも、すこしは自由になれると思うよ?」
「あ、そうなんだ」
まあ。そっか。
モテる、よね。うん。
「前だったら、こういう所でも、相手見つけて消えてたけど――――……ソラにはりついてるから、今日は行かないかな」
そんな台詞に、なるほど、いつもはそうなんだ、と納得。
じゃあ、オレがルカのものとか言ってるのも、城に着くまでの間なのかな。
ふーん、そっか、と頷いてると。
「まあ、それまでは、いっぱい可愛がってもらっとくと良いよ」
「……っっ」
オレ、別にそれ望んでないのだけど……。
そう思いながらも、すごく恥ずかしいし。
リアも、結構ここらへんの会話、ゆるいなー……。
やっぱり、この世界が、ゆるいのかな。
「ソラ、飯来たぞ」
そんな声と共に、不意に後ろから回ってきた腕に、肩を抱かれて、引き寄せられた。
「? ――――……何赤くなってンの、お前」
「……何でも、ない」
……ルカに可愛がってもらっとけとか言われて、なんか恥ずかしくて赤くなったとか、絶対言いたくない。
言わないからか不満げなルカから視線を逸らし、目の前に置いてある、見慣れない食べ物に目を向ける。
「……この食べ物、何??」
「……肉。 食う?」
不満げだったけど、ルカは答えてくれて、そう聞いてくれた。
「うん……食べ、よう、かな……」
歯切れが悪くなってしまうのは、その形状。
なんか……すごく、でかい……。丸焼き…とまではいかないんだけど。
何の肉なんだろう…… これは、考えないで食べた方がよさそうだな。うん。
なんか、やっぱり、基本、茶色いんだよなー、食事……。
やっぱり、食事の色どりって。
絶対大事だったなー…なんて、思いながら。
フォークに刺された肉を、ルカに渡されて。
一瞬、ちょっとためらいながらも。
いただきまーす、と言って、ぱく、と食べてみる。
「――――……あ、美味しい」
良かった、美味しかった。
安心しながら言うと、ルカが、ふ、と笑った。
「まあ、生きてる時はグロイんだけどな、これ」
「っっやめて、言わないでよ、 せめて、飲み込んでからにして! 無理!!」
ぷ、とルカが笑ってる。
意地悪!!!
ルカが何か言う前に飲み込んでしまおうと、めっちゃモグモグして、飲み込んだ。
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