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「なんか心配」
その後、リアとも合流して、皆で得た情報の話し合い。
何となく近くで聞いてたところによると……。
町を出て左にまっすぐ行った先にある山に、強い魔物が住み着いてて。
それが目撃されるようになった頃から、付近に居る魔物にも影響が出始めて、普段ならこの町の人達でも何とか対処できていた魔物が、手に負えない位凶暴化してしまったらしい。
その強い魔物が直接襲いに来たという事はまだ無いらしいけれど、放っておく訳にはいかないという事になった。
目撃情報によると、黒くて信じられない位大きい。情報はそれ位しかなかったみたいだけど、居場所が大体分かったルカ達は、完全に行く気になっていた。
魔王と戦う位までレベルを上げたのだし、魔王以外の魔物がどんなに強くても、多分、大丈夫なんだろうなあと思いながら、聞いていたけど。
よく考えたら。
オレより年下のルカと。オレと同じ年のゴウとキースと。3つ年上の女の子のリア。
こんな4人が、嘘みたいにデカくて凶暴な魔物と戦うって。
すごいこと、だよな……。
ていうか、絶対大丈夫なんて事、無いのか……何があるか分かんないし。
……ゲームだと、戦いの中で死んでも、生き返ったりするけど……今オレが居るここは、どうなんだろう。
ここは実は、オレのゲームの世界じゃないのかな……。
設定だけは一緒だけど、ここはリアルな世界で、だから、脈もあって、ちゃんと普通に生きてる感じだったりするのかな……。
そうなると、オレは一体、どうやってここに……。
とか考えていると、訳が分からなくなってくるから。
一番分かりやすいのは、あくまでこれが全部が夢で、オレは、長い夢の世界に居るだけ。
ていうのが、分かりやすくて、納得が出来るんだけど。
でも、もし、違ったら……。
ルカ達、ゲームの世界だから、めっちゃレベル上げてるし大丈夫、とか思ってたけど、もしかしたら、それとは違う世界だとしたら、山の魔物も、もしかしたら、魔王より強かったりする可能性も、無くはないし。
なんだか、すごく、不安になる。
平地だったらすぐに行くつもりだったらしいけど、山の上の方という事で、結局今日はここに泊まって、明日明るくなってから討伐に行く事に決まった。
「んじゃあとりあえず、飯食うか」
「結構でかい酒場があったぜ?」
もう普通に、ルカとゴウがそんな事を話し出したけど。
何だか、すごく、心配になって。
「……どんな魔物かも、分かんないのに、4人で行くの?」
何だかものすごく心配になって、ぼそ、と言葉に出したら。
4人が、ふ、とオレを振り向いた。
「たった4人で、危なくないの?」
4人はきょとんとしてたけど。
オレが心配してるんだと分かったらしくて、なんかそれぞれの感じで、皆が笑った。
「4人で十分。オレら、魔王すら4人で戦いに行った位だしな?」
ルカが全然平気、みたいに笑う。
「そこらの魔物になんか負けねえよ。何? 心配なのか?」
ゴウも、可笑しそうに笑う。
「一般の人達の軍隊を連れてくより、オレらだけの方が強いんだよ。……ソラは知らないだろうけど」
静かにキースも笑う。リアも、そうそう、と頷いて、優しく笑ってる。
……知ってるんだけど。
ゲームの世界の話なら、知ってるんだけど。 ……ここ、ほんとにゲームの世界なのかな。
戦いに敗れた時って、セーブポイントから、やり直せるの?
……ていうか、こうして過ごしてると、もう、セーブポイントがあるなんて、思えないんだけど。
「……セーブポイントって知ってる?」
「なあに、それ?」
無いだろうなと思いながら聞いたら、リアがクスクス笑いながら答えた。
……やっぱり、無いんだな。てことは。
――――……戦いに負けたら終わり?
そう思うと。
――――……なんか、この世界って。
危ういんだなって。ドキドキしてきた。
「負けやしねえし、大丈夫だって――――……お前、守るっつったろ」
「――――……」
ルカの言葉に、何とも言えなくなって、黙っていると。
「ほら、飯いくぞ」
ぐい、と腕を引かれる。
当たり前みたいに戦って、レベル上げて、お金稼いでってやってたけど。
なんか、RPGって。 ……すごい事を、させてたのかも。
……こんな事、実感する時が来るとは、思わなかったなあ……。
そんな事を思いながら、ルカに引かれて、酒場に入った。
うわ……めっちゃ混んでる……。
座席もあるけど、立ってる人達も多くて、なんだろう。日本にはなかなか無い感じ。
クラブ……というには、なんか雰囲気違うし……。
とりあえず、テーブル席で座って食べてる人達、カウンターで飲んでる人達、酒を持って、ウロウロしてる人達。
うわー、なんか……すごい、混沌としてる感じ……。
テーブルに座って、また適当な注文で、ルカが頼んでる。
「あ。酒場って、そういや――――……ソラ、さっきの女居ても、行くなよ」
ものすごくうるさい中、ルカがオレの耳元で、そう言った。
「え?」
ルカを見上げて、一瞬考えて。
「あ」
思い出した。
「うん」
ていうか、ずっとルカの隣に座らされてんのに、行く訳ないじゃん。
そもそも、別にそんなに誘われた訳じゃないし。約束もしてないし。
にしても。……ルカのこれって、何? ヤキモチ?
さっき、ゴウに飴を食べさせようとした時の、あの感じも何なんだか。
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