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「ルカが良い……」
ルカの情報収集がてら、いくつか店に寄った。
靴屋で、靴や靴下をゲットして、歩きやすくなって、めっちゃ気分が上がった。
それから、お菓子屋さんみたいな店に入って、飴玉のお菓子を一袋買ってもらう。
何種類かの色の内、オレンジ色の飴を、ぱく、と口に入れてみると。ちゃんとオレンジっぽい味がした。
リアの激マズジュースが、オレンジ色をしてたから、ものすごい警戒してたんだけど。
この感じだと、オレンジっぽい果物もなってるのもかなあ。
あー、なんか、畑とかも行ってみたいなあ。
ちょっと違う作物がなってるのかなあ。
「1個食べさせて」
店を出た所で、ルカが言うので、ぱく、と口に入れてやってると。
少し離れた所から、ゴウがやってきた。
「人がまじめに情報収集してんのに、何、イチャついてんだ?」
近寄ってきて、そんな風に言う。
別に、イチャついてた訳じゃない。ルカも特に何も言い返さず、飴玉を味わっている。
「食べる? あげるよ?」
「おお、じゃあ、もらう」
「ちょっと待ってね」
1個出して、ゴウに食べさせてあげようとしたら。ルカに手首掴まれて。
「ん?」
と見上げると。ルカがその飴を持ってゴウの口に乱暴に詰め込んだ。
「つーかお前……ルカ……」
乱暴に詰め込まれたゴウが、じろりとルカを見てる。
……そうそう、これこれ。
餌付けとか言って、オレにご飯食べさせる時、こんな感じで詰め込まれると思ったんだよね…。
まさに、これがルカのイメージ。ぷぷ。
なんかオレは、意外にも優しく食べさせられて、恥ずかしかったけど。
面白くて笑っていたら、ルカがオレをちらりと見下ろした。
「つか、お前、そういうの、オレ以外にはすんな」
「――――……ん?」
あ。「餌付け」??
「……うん? 分かった」
頷いてた所にちょうどキースも合流してきた。
キースとルカが話してる背後で、ゴウがオレを見下ろした。
「? 何?」
じっと見つめられて、首を傾げると。
「お前って、そんなに良いの?」
「……? 何が?」
「抱き心地。そんなに良いのか?」
「――――……っ?!」
抱き心地って。
抱き心地って、どーいうこと。と思ったけど。
もう、それ以外の意味なんかありえなそうで。
一気に顔に熱が集まった。
何、言ってんの、この人!
「ルカのあの感じ、珍しくてさ」
「あ、の感じって……?」
「そんなに良いのかなあ、お前。そういや声はエロかったけど。なあ、ソラ、1回、オレともやってみないか?」
「…………っっ??」
な、何言ってんの、ほんとに。
がつ、と肩を組まれて、ルカとはまた違う感じのイケメンの圧に、めっちゃ引く。
でも、これをルカに助けてっていうのも、なんか……。
なんか、プライドが……。
と、思うのだけど。
ルカのもの宣言されてるし、冗談だよねと思っているうちに、どんどん顔が近づいてきて。 え、嘘でしょ。と思ってたら。
「――――……っ!!!」
ゴウの唇が、オレの唇に、重なった。
「っる……!」
ルカ、と呼び掛けた唇をまた、塞がれて、持ってた飴の袋を落とした瞬間。
ルカが気付いてくれたみたいで。
どか、と激しい音と、衝撃が伝わってきて、その瞬間、ゴウが、膝の後ろ辺りを押さえてうずくまった。
その隙に、ルカがオレを小脇に抱えるみたいに、自分の近くに引き寄せた。
「……痛ってーな!!」
「ソラに触んな」
抱えられて、低い声でゴウに言うルカに、少しほっとするのは、何故か。
なんか。少し、ルカに慣れてる気がする。
「…………つーか、こういうの、お前が決める事じゃねえだろ。当人同士がよけりゃ、別にいい事だし、今までだって、やった女かぶった事だって、いくらだってあんじゃんか」
ゴウのセリフに、どん引き。でも、少し納得する。
…………なるほど。
貞操観念、ゆるすぎる世界だってことは分かった気がする。
世界、なのか、この人達が、なのか、分かんないけど。
…………そういえばルカ、言ってたっけ。
こういうのに、遠慮も我慢もいらないとか何とか……。
「――――……ソラ」
「……っえ?」
「お前、オレとゴウとどっちが良い?」
「………………っ」
どっちも、いやだ。
オレ、男とは、寝たくない。なんなら、キスだって嫌だ。
どっちも、ほんとに、嫌だ。
でも。オレ、ルカのものだって頷いてるし。いっぱいなんか色々買ってもらって、意外とよくしてくれてるし。
…………ここで、絶対2人とも嫌だとか言ったら。
後が怖いのは、ルカだ。
「ルカが、いい……」
言うと、ルカは、にや、と笑って。 ゴウはちょっとため息。
「まあいいや。ルカに飽きたら、オレとしような?」
「飽きさせねーし」
「んなの、わかんねえだろ」
目の前の会話の意味が、わかんない。
しかもオレ。
…………ルカが良いとか、言わされちゃったよ…………。
ルカが良いとか。
はー。
ため息をついてたら。
キースが、苦笑いで、オレを見た。
「――――……嫌な時は、嫌って言っていいんだよ?」
「――――……」
「ほんとに助けてほしい時は、言っておいで? 別にオレでも、ここに居られる手伝いはしてあげられるから」
「……ありがと」
何となくありがたくて、キースの静かな笑みを見ながら、頷いた。
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