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「朝のひと時」

   昨日、抱き締められすぎて、なかなか眠れず。  眠い目をこすりながら起きたら、ルカが居なかった。  ……どこ、行ったんだろう。  しばらくベッドの上で、ぼーーっとしていて。  あ、と気が付いた。  昨日ルカが買ってくれた服を引っ張り出して、着慣れないけれど、何となくウエストで縛る。  それから、昨日ルカがくれた銀貨を、布団の上に布を敷いて、広げた。  磨いたら綺麗になる、てルカが言ってたのを思い出して。  とりあえず、風呂場に普通にあった歯磨き粉を持ってきて、布に付けて擦ってみる。  おお。ちょっと綺麗になった。  ルカのお城も、良い感じにピカピカしてる。  他のお金も、一生懸命磨いていると。  がちゃ、とドアが開いた。 「起きてたのか。何やってんだ――――……って、ああ……」  オレが何をしてるかが分かった瞬間、ルカがクス、と笑って。  近づいてくると、ベッドの端に腰かけた。  1枚手に取って、ぷ、と笑う。 「随分綺麗に磨いたな?」 「うん」  頷きながら、続きを磨いてると。  ぽん、と、ルカが持っていた袋をベッドに置かれた。 「何??」  磨いてたお金と布を置いて、その袋を手に取って、中を見たら。 「――――……え。」  これ、昨日、買いたいなーと思って抱えてた、お菓子たち。  怒ってたルカが、ぽいぽいと棚に戻しちゃって、残念だなーと思ってたけど。 「え、これ、どうして」 「昨日、抱えてたろ?」 「……そう、だけど……え、今、買いに行ってくれてたの??」 「ああ」  わあ、なんか。  すっごく嬉しいんですけど。  なに、この勇者。  横暴なくせに、こういうこと、何気なく、しちゃうとか。  なんか、色々横暴なだけに、余計、じーんとしてしまうというか。 「――――……あり、がと。ルカ。 すごい、嬉しい」  もう、素直に、お礼を言うしかないし。 「ああ。――――……つか、合ってたか? 抱えてたやつ」 「うん。……ていうか、オレが持ってたより多い気がするけど」 「いまいちはっきり覚えてなかったから、適当に追加した」  ルカが、ふ、と笑いながら言うので、なんだかますます嬉しくなって、ありがとう、ともう一度言ったら。  ぎし、とベッドが軋んで、ルカが、顔を寄せてきた。 「礼なら、キスがいい」 「――――……」  オレ、ほんとに、こういうやり取り、慣れてないんだよね。  女の子とも、オレはしてない。恥ずかしいし。  しかも、キスしろとか、言われると。  ――――……すぐ、赤くなってしまう。  ……ニヤニヤしてるルカが、またからかわれてるみたいで、ちょっと嫌で、止まっていると。 「早くしろよ?」  急かされて。  仕方なく、ゆっくりと、ルカに唇を寄せた。  重ねた所で、ルカの手が、オレの後頭部に回って、ぐい、と引き寄せられて。  舌がゆっくり入ってきた。  ……あれ。  ――――……なんか。  ちょっとゆっくりだ。  優しく、触れて、優しく、絡む。 「――――……ん……」  苦しくて声が漏れるんじゃなくて。  ――――……なんか、甘くて、くすぐったくて、自然と、出てしまった。  うわ。  ……なんか、ルカのこういうキス――――…… 恥ずかしい、かも……っっ。 「――――……好きなんだろ、こういうのが」  少しだけ離れた唇の間で、そんな風に、囁かれる。  くす、と笑ったルカに、かあっとまた赤くなる。  小さく、頷いたら、ルカがまた少し笑って。  またゆっくり顔を傾けてきて、唇が重なろうとした瞬間。  こんこん、とドアが、ノックされた。 「ルカおはよー、食事食べて、行く準備しよ」  リアの声。 「すぐ下行く」  そう言って、はー、とため息をついたルカが、最後にちゅ、と唇を合わせてから、立ち上がった。 「朝飯、いくぞ」 「あ、うん」  磨いてたお金をポシェットに戻して、お菓子もルカの袋に入れて、オレも立ち上がった。 「水色の服、着たんだな」 「あ、うん」 「似合う」  一言だけ、伝えてくれる。  なんか。ルカって。  毎回、こんな風に、軽く、褒める。  その都度、なんか、ほわっとするのは。  何だろか。  良く分かんないけど。  ルカの後をついて、階下に向かった。    今日は――――……でかい魔物、倒しに行くんだっけ……。  大丈夫かな……。  なんか、急に、不安になってきた。

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