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「何でだろう」

  「泣き止んで、ソラー、はい、タオル使ってー」  リアが、タオルを差し出してくれるので顔を覆う。  ひし、と何かが腕にしがみつくので、少しだけ顔を上げると、ミウがしがみついてた。 「……大丈夫だよ」  ミウに言って、涙を拭いてると。 「何だ?……どーした?」  3人で少し離れて海の方を見ていたのに、いつの間に近くにきてたのか。ルカの声がして。  かと思ったら、ぐい、と頭を掴んだ手が、オレを、ルカの方に引き寄せて。  胸に頭、押し付けられて。そのまま肩を抱かれた。 「何泣いてンの、お前」  クスクス笑うルカ。 「こいつどーしたんだ、リア?」 「あー……のー……ちょっと、色々話してたら……」 「ふうん……?」  リアの言葉に、よく分からなそうな声を出しながら。  でも、ま、いっかと思ったみたいで。 「リア良いぜ、引き受ける」  ルカの笑みを含んだ声が聞こえて、肩を抱く手に力がこもる。 「うん、ごめんね、よろしく。ミウ、ちょっとおいで~」  リアはもう、ルカに任せる事にしたらしくて、ミウを抱っこして連れたまま、ゴウとキースの所に歩いて行ってしまった。   「つか、ほんと、何泣いてんだ、ソラ。しかもリアの前で」  ふ、と息をつきながらの、声。  ぐい、と顎を掴まれて、上向かされる。   「――――……泣くのは、ベッドの上だけにしろよ?」 「……っ」 「……襲うよ? ここで」 「――――……っっっ」  とんでもない事囁かれて、途端に涙、引っ込んだ。 「はは、泣き止んだ。 面白ぇな、お前」  クックッと笑いながら、よしよし、と頭をぐりぐりされる。  タオルを取られて、顔をめっちゃ拭かれて。  また上げさせられて、泣き顔、しみじみ見られて。 「――――……泣くなよ、馬鹿ソラ」  ふ、と目を細めて、見つめてくる。  綺麗な、青い、瞳。  ――――……じっと見つめてると、胸が、痛い。  知らない感覚で、思わず首を傾げた。 「……オレ、ね」 「うん?」 「ルカって、さ」 「ああ?」 「…………偉そうだし、勝手だし、意地悪だし、意味わかんないし、すぐエロいことするし……って、ルカのこと、思ってたんだけど」 「あ?」  じろ、と、睨まれるけど。  でも、それ以上何も言わないので、そのまま、話を続けることにした。 「――――……なんか……良く分かんないけど……ここにいる、間は」 「――――……」 「ルカが、オレと居たいと思ってくれてる間は……」  ルカを見上げて、まっすぐ、見つめて、自分の中の気持ちを整理する。  なんか、よく分かんないけど。  ほんとに偉そうで、Sっぽくて、意地悪で、からかってばっかで、エロくて、なんか……ほんと……ゲームの主人公としては、どーなのって感じなキャラだけど。  でも、年下なのに、なんかすごく、頑張ってて、強くて、逞しくて、たまにちょっと優しくて、ふと気づくといつも、そばに居て、オレに触れてる、この勇者が。  ――――……なんか、嫌いじゃなくて。 「……ルカと、ずっと、居るから」  そう言ったら。  ルカは、ふ、と瞳を細めて、微笑んだ。 「何今更。……ずっと居ろって、最初から言ってるだろーが、オレ」  そういえば。  そうだった気もする。 「……そういえば、それって、何で?」  疑問をそのまま口にしたら。  ルカはふと止まって。さあ?と首を傾げた。 「なんでだろうな? よく分かんねえ」 「――――……」 「つかお前のオレの評価って、なんな訳」 「あ。ごめん……つい、正直に……あ」  失言続く自分の口を塞いでいると。  ルカが苦笑い。 「じゃあ、お前は何で、そんなオレの側に居るとか言ってんの?」 「…………さあ。……なんでだろ?」  よく分かんないけど。さっきリアの話を聞いてた時。  ……オレを抱いて寝てる時のルカの顔が浮かんで。  ――――……ちょっとだけ可愛い、年相応の顔して寝てるルカの顔。  ……少し、安心して、寝てくれてたのかなあ。とか。  ……ちょっと、浮かんじゃったんだよね。  「?」  なんか急に影が出来て、上を向いたら。  キス、された。 「……っ」  皆、すぐ、そこに居るのに。  キスが離れても、びっくりしたまま、ルカを見つめていたら。  ふ、と笑まれる。 「……行くぞ、ソラ。とりあえず町に行って、船出せるか聞くから」 「あ、うん」 「お前、船酔い――――……しそうだなー」  根拠もないのに、勝手に想像して、笑ってるし。 「しないし!……多分」 「多分かよ……」    クッと笑い出すルカ。  海に船で出た事って、記憶がない。  湖の遊覧船とは違うかな??  ……違いそうな気がする。  酔い止め薬とか…… うう。無さそうだけど。 「ほら。来い」  腕を引かれて。  ん、と頷いて、皆の所に向かって、ルカと一緒に歩き出した。

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