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「シャオの町」

   町に入って皆とばらけた。  ルカとオレは今回は、町長の所に挨拶。詳しい事は船乗り達に聞いてほしいと頼まれて家を出た所で、町の皆に話を聞きに行っていたゴウとリアが戻ってきた。 「船乗りたちに話聞いてきたぜ。なんか船が出せねえって言われた」  ゴウが顔をしかめながらそう言う。 「船が出せない? 何でだ?」 「ここ数日、海が荒れていて、とてもじゃないけど出せないんだって。出したら転覆しちゃうって」  リアも困り顔で言って、ため息をついてる。 「こんなにいい天気なのに?」 「いい天気で風もないのに、波が高いんだってよ。……まあ。何かがあるのは間違いないな」 「船が出せねーと、その何かのとこにも行けねえな……」 「どうすっか」  うーん、と、皆困り顔。オレは、特に言う事もなく、ミウを抱いたまま、ルカの隣で話を聞いていた。  大変だなー。  船が転覆しちゃうなら、皆がいくら強くても、だめだよねえ……。  うーん。    そこに、キースが合流してきた。  「なんかさ、この町に1人だけ、こんな海でも船を出せるかもしれない船乗りが居るらしいんだけど。そいつの船も、腕も、ダントツで良いらしいんだけど……」 「けど?」 「聞いて、家訪ねてみたけど居なくて、隣の人に聞いたら、すごい遊び人で、色んな子のとこ泊り歩いてるらしくて。いつ帰ってくるかわかんないって」 「はー?? 何それ?」  リアの呆れたような声。 「それでも、町のどこかには居るんじゃないの?」 「それが隣町とかにも相手がいるらしくて、ほんとどこに居るか分かんないって」 「――――……ルカみてえな奴だな」  ゴウがため息をついてる。 「ざけんな、オレ、そこまでじゃねえし」 「……まあ今はな。まあ、すげえモテるっつーことだろ?」 「ルカ、どーする?」  キースの言葉に、ルカはため息をついた。 「探すしかねえよな。そいつしか船出せないんだろ?」 「そうらしいね。ここ数日、漁も全面ストップしてるみたいだし」 「名前と見た目は? どんな奴だって?」 「名前はアラン、緑色の髪に、青い瞳だって。髪は深緑らしいけど、目立つらしいから見れば分かるってさ」 「探すって……誰かの家かも知れないのよね?」  リアがため息をついてる。 「どうやって探す??」 「一軒ずつ声かけてくか?」 「ええ?? この町結構大きいのにー?!何軒あるのよー!」  皆が嫌そうな顔をしている。  ふと、思いついて。 「町内放送みたいなの、ないの?」  とオレが聞くと、皆が振り返り、ん?という顔。  放送っていうのが無いって事だよな……スマホとか無いし。  何て言えば良いんだろ? 「例えばさ、何か、合図とか。大きな音で3回鳴らしたら集まるとか、そういうの……この町には無いのかな?」 「――――……聞いて来る」  ルカが町長の家に戻って、しばらくして戻ってきた。 「船乗りを集める音があるらしい。嵐の時とかに、船を守るために集合する音。鳴らしてくれるってよ」 「わ、じゃあ1軒ずついかなくていいんだ、ソラ、すごーい」  リアが笑顔でオレに言って。  ルカはオレの頭をクシャクシャと撫でた。  あ、なんか。  ――――……ちょっと嬉しい。  何となく喜んでいると。  少しして。ものすごくデカい、太鼓みたいな音がした。  5回続けて。  町の真ん中の広場みたいな所に、続々と男たちが集まってくる。 「――――……緑の髪、居ないな?」  集まった中に居ない。 「アランて奴がどこにいるか知らないか?」  ルカが大きな声で、集まった皆に言う。口々に答える事を聞いていると。  この音で来ないなら、町の中心部には居ない。町はずれの方には聞こえにくいから、端に居るか、別の町に居るかも、との事だった。 「アランの他に今船を出せる奴は?」  ルカがそう聞いたけど、皆、首を振る。  結局アランを探すしかないという事になった。  とりあえず皆にも町を探してもらい、もしアランを見かけたら探してる事を伝えてもらう事にした。見つかったら今の太鼓を1回鳴らしてもらってオレ達に知らせてもらうという事で、解散となった。  皆が散っていく中、ルカ達が集まる。 「どーする? 今ちょっと話聞いたけど、船が出せなくなってから、家に帰ってないってよー? どーなのよーそいつー」  リアが、めちゃくちゃため息をついてる。  ……まあ居るよね。  元の世界にだって、色んな子のとこ渡り歩くような奴、居たもんな。  この世界、もっとそういうの自由っぽいし。  あるよねえ。うん。  しかも船乗りなのに船が出せないとか。  暇なんだろうし。  ゴウが言ってた、ルカみてえな奴だな、に。ちょっぴりひっかかりつつ。  でも、まあ、そうか。と思いつつ。  オレは腕の中のミウを抱き締めていた。  

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