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「祝福を」

      アランを探してる間にもう結構いい時間になっていて、お昼を先に食べようって事になった。  近くに良いとこないか聞いてくるーなんてリアが言って、すぐに慌てたように帰ってきた。 「なんか隣の町で2組のカップルが一緒に結婚式してるんだって!」 「へえ。2組。めでたいね」  キースがふふ、と笑う。 「ルカに祝福もらえたら喜ぶんじゃない? あ、ちなみにその町のレストランが美味しいらしいわよ。でも結婚式してるからお店がやってるかは分かんないけど。行ってみる?」  そんな風にリアが言い、ルカも、良いぜ、と笑う。  祝福?? 何するんだろ。  分からなかったけど、もう皆すぐ移動モードになったので聞けず。  リアの近くに集まった。 「じゃ行くよー」  リアが移動の魔法を唱えて。オレは、ミウを抱き締めて。  ――――……いつものように、ルカが、オレの背に、手を置いた。  別に、ミウみたいに飛んじゃったら困る訳でもないし、触れてないと飛べない訳でもないのに。ルカは、オレに触れてるなあ、とまた思う。  新しい町の入り口に降り立って、ぎゅと抱き締めてたミウを離してあげると、ふわふわと頭上を飛んだ。  町の中から楽し気な音楽が、流れてきていた。  中に入ると、教会の前に人がたくさん居て、多分、今まさに、式が行われている所。  花びらがふわふわ、皆が投げてるのが見える。  フラワーシャワーだっけ? こっちの世界でも、同じ事するんだー。  キレイだなあ、なんて思いながら、近づいていくと、皆の中心に居る人達が見えてきた。  2組の新郎新婦。  ……と思ったら。  …………1組の新郎新婦と、1組の新郎新郎???  オレは1人で目をぱちくりさせていたのだけれど。  お祝いしてる人達は普通で、まあそっちは同じ町の人達だから、皆納得の上なのかな、とも思ったけど、ルカ達も皆、全然普通で。  ルカが真ん中に近づいてくと、皆、一瞬不思議そうにルカを振り返っていたけれど。誰かが、「ルカ王子」と名を呼んだら、一気に盛り上がった。 「王子、祝福をいただけますか?」  教会の神父さまが、ルカに言った。  何、するんだろう、と思ってたら。  リアが、隣で、クスっと笑った。 「すっごい素敵だから、ずっと見てて?」 「ん……」  なんだろ。  2組の夫婦が、ルカの前に並んだ。  ルカが、何かを唱えてる。  オレ達は、少し離れた所で見守ってるから、何を言ってるかは聞こえないけど。  新しい夫婦たちは、ルカをまるで眩しいものでも見るように、まっすぐ見つめてる。    ルカが、4人の頭に手をかざした瞬間だった。  辺りが、ぱあっと、光って、  ふわっと、風が吹いたと思ったら。  まわりの人達が持っていた花びらたちが風に乗って、最初に4人の周りを舞って、そこに居た皆の周りも舞って。  心地良い花びらの風と、優しい光に、数秒、包まれて。  その花びらが、全部一度に上に集まったと思ったら。  今度は、花びらの雨、みたいに、皆の頭上に降ってきた。  歓声が上がって、皆、すごく嬉しそう。  ――――……そりゃそうだ、すごい、綺麗だった。  …………ルカのくせにさ。  これよりロマンチックな事なんてないんじゃないって位の、光景だった。  いっつもエロエロなのに。  ――――……ルカなのに。  オレ達の所にもひらひらと舞い落ちてきた花びら。  とっさに手を出したら、手に乗っかった。  キレイだった、なあ。  ――――……ルカ、すごい。  もう素直にそう思って、ふ、と笑ってしまう。

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