77 / 290

「楽しめば良いのに」

   こんな事だったら、転生したら〇〇だった、みたいな。  漫画とか小説で流行ってた話。もっと真剣に色々読んどきゃよかった。  さらっとしか見た事ないから、なんかほんと軽い知識が混ざり合ってて。  何の役にも立たない。  はーもう、今更遅いけどさ。まあ読んでても役に立たなかったかもしれないけど。  と、本当にとりとめのない事を、色々考えていたら、町長の所から、ルカとアランが揃って戻ってくるのが見える。  あ。……ルカ。  ……何かあの2人って。  ……ちょっと似てるかな。  背格好も、そうなんだけど。  よく分かんない自信に溢れてるとこ、とか。  なんか、人には惑わされない喋り方とか。  ……あーいうのが、モテるのか。  ………………まあ。分からなくはない、けど。   やっぱ、自信があるって、魅力的なんだろうなあ。  なんかお互い、初めて会ったと思えないような感じで、話してるし。  いいな。もともと同じ世界で生まれて、生きて来てる人達だしな。 「――――……」  …………って、オレの今の、何だ。  同じ世界で生まれてきたかったみたいな事、今普通に思ったような。  ああ、なんか。  さっきから、思考がよく分からない。  正直、今考えても分かんない事だから、  居られる限り、楽しく過ごせばいいんだって、分かってはいるのに。  大好きなRPGの世界。  ――――……魔法とか。ワクワクするような事がいっぱいで。  冒険するって、ドキドキするし。  ミウは可愛すぎだし。  そう言うの全部、今だけだと思って、楽しみながら過ごすしか無いって、分かってるのに。  ルカとアランがすぐ近くに戻ってきて、3人と話してる。オレが座ってるベンチから2メートル位の所なので、話は全部聞こえてくる。   「アランが3、4人で良いって言うから、それだけ頼んできた。アラン今日から頼む。もっと人手欲しくなったら増やしてもらうし」 「了解ー。 オレの船の修理、この町の地下でやってるから。そこの端の階段降りたとこね。用があったら、入ってきてよ。とりあえず今から夜までは頑張るわ」  ああ頼む、とルカが頷くと、アランも頷いて、歩き去って行った。 「良かった、船出したくないって言わないのね、アラン。断られたらどうしようかと思ったわ」  リアがそんな風に言って笑ってる。 「まあ、ちょっとは嫌がってたけどな」    ルカがそんな風に言って、笑う。  あれちょっとだったかなあ?と思って、少し可笑しくなってしまう。 「ルカ、押し切ったの?」  キース、鋭い。大当たり。  ――――……大体、ルカみたいな人、オレ、初めてだし。  絡む事自体、人生で初。  あんな、強烈な、オレ様キャラの王子なんかに、  可愛いとか。オレのとか。毎日言われまくるのも、当たり前だけど、初。  なんか、オレ男なのにとか、考える隙間もないのが、変だし、さ。  ねーミウ。  なんだかなーだよねー。  膝の上のミウをぐりぐりと撫でていると。  ゴウの声がした。   「で? オレらはどこ行くんだ?」 「……そうだな」  ルカの声が、ちょっと上の空。  不思議に思って、ミウからルカに視線を向けると。  オレを見てたルカと目があった。  ?? 何、だろ??  何か言いたげな視線に、更に不思議に思っていたら。 「とりあえず周辺の町に飛んでみる?」  リアが地図のようなものを見ながらルカに言ったけど。  ルカは、返事をせずに、オレの方に歩いてきた。 「ソラ」 「……?」  椅子に座ってるオレを見下ろして、ルカはふ、と息を付いた。   「何変な顔してンだ、ソラ?」  え、と止まってしまう。  そんな変な顔、してないと思うんだけど、オレ。 「どうした?」  頭にでっかい手が乗って、ぐりぐり撫でられる。 「……ぐしゃぐしゃにしないでよ」  髪を乱されて、もうなんだか、笑ってしまいながら言うと。  笑ったオレを見て、ルカもふ、と、笑んだ。 「どこ行くか決めるから、来い」  手首をぐい、と掴まれ、その手の熱さに、  何でだか、ドキ、と、胸が弾む。  オレが何か色々モヤモヤ考えてたから。  心配、してくれたのかな……。  オレの手を引いて前にいるルカの背中を見つめる。  ……オレが消えないように、  ずっと、掴んでて、くれないかな……。  なんか。  ルカが、掴んでてくれてたら。  離れずに、居られるような、気がしてしまう。  ……そんなの、なんの、根拠もないけど。

ともだちにシェアしよう!