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「したいこと」

 アランに船を出してもらう為に、修理を速める。その人手をお願いするために、ルカとアランが再び町長の家に入って行った。  広場に置いてあるベンチに座ったら、ミウが膝の上に乗ってきた。  ……可愛い。  大好きだなあ。ミウ。  よしよしと、撫でながら、ぼーーーーと、空を見上げた。  青い空。  住んでた東京の街の空とは全然違う。  もっと澄んでて、青が強い。  自然も多いし、もしかしたら、日本の田舎の空はこんななのかなあ。  とも思うけど。近年そんな田舎には行ってなかったから、分からない。  とりあえず東京とは、違いすぎる。  ほんとに、綺麗だなと思う。  空だけ見てても、町の風景だけ見てても、  違う世界だなあ、なんて思って、ふと、考える。  ――――……なんか。  もうここに来て、これで何日目だっけ。  もう毎日普通にここで寝起きして、食事して、  色んな魔法に触れて。  考えられないような、崖みたいなとこ登らされる冒険もして、  変な怪物みたいなのに足で挟まれて飛ばれ。それをルカが倒して。  めちゃくちゃ可愛くて、ふわふわ飛ぶ不思議な生き物に懐かれて。  ……その全部に、勇者一行が一緒に居て。  ――――……中でも、ルカは、寝る時も一緒で。  ……ただ、寝てるだけじゃなくて。  ――――……オレもう、何回、ルカと、したかな。  一番最初こそ、薬を使われたせいもあって、もう体ムズムズして、なんかもう、こんなの夢なんだから、帰った時のオレの体は無傷!とか、訳の分からない事を思って。帰るまで守ってくれるなら、良い、とか言って。  ……でも、なんか、多分、あの遊び人、は。ムカつくけど。  めちゃくちゃ、上手なんだろうな。  ルカにされるのは、ほんとに、気持ち良すぎて。  しかも、体だけなら、もっと嫌がってるはずなんだけど、オレ。  もし、抵抗できなくても、少なくとも心の中では。  なんか、ルカは、居れば居るほど、全然違くて。  可愛いとか。優しかったりして、抱き締められたり。  オレのオレのって、独占欲強くて。なんか。おかしな気分になってくるし。  ほんとに、大事にして、守ってくれてる気が、するし……。  毎日、嫌とか思う間も無く、キスされて、触られて。  何度も受け入れて――――……。  なんかルカの側に居るのが当たり前になってきている。    今オレがしたい事ってなんだろ、て、ちょっと考える。  どう、考えても.  ……日本に帰りたい、じゃなくて。  ……ルカが、オレで安心するなら、安心させてあげたいなあ、なんて。  さっきのリアの話を聞いてから、そんな事すら頭にある。  料理をルカに作ってみたい。  お菓子も。甘すぎない美味しいのを、食べさせてみたい。  またマッサージも。してあげたい。  ミウを抱っこしていたい。  リアやキースやゴウと、一緒に居るのも、当たり前になってて。  ここに居るのが、居心地が良い。  …………あれれ。  オレ。いつから、帰りたいって、思ってないんだろう。  向こうの世界はどうなってるんだろうとは気になるけど。  これが夢なら起きたら終わりだけど。  もし、そうじゃないなら、オレは今、もしかして向こうでは行方不明とかになってたりするのかなとか。  それとも最初から向こうにいないことになってるのかな、とか。  過去に見たファンタジーものの話が、混ざり合って色々浮かぶけど、なんの確証もないので、考えても無駄だなと思ったりもする.  なんかもし今、急に目の前が光ったら、逆にどうしよう、なんて、思って。  拒否れるかな、帰ること。 問答無用だよなー、来た時の事考えれば……。  ていうか、大体、オレは何でここに居るんだ?  夢だとして、こんなに何日も繰り返したりするのかな?  やっぱり夢じゃないのかな。  感覚的には、もう様々はっきりしすぎていて、夢な気はしないけど。  じゃあなんなんだ。  どう思ったらいいんだろう。   全然、分かんない。

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