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「ここに居る事が」
「え。だってミウがめちゃくちゃ可愛いからさ。波が冷たかったんだよね? ミウ」
抱きかかえながらミウに話しかけてると、ルカと一緒に近付いてきてたアランが、ふ、と笑う。
「確かにミウって、すげー可愛いな」
「そうでしょ、めっちゃ可愛いよね」
「抱かせて」
アランが手を伸ばす。
ミウはふわんとオレから飛んで、アランの近くに飛んで行ったと思ったら。
腕の中には入らず、ぽふ、とアランの頭の上に座った。
「は? なんで頭の上?」
アランが頭の上のミウを抱っこしようと手を伸ばすけれど、さ、と避けている。おちょくってるみたいな。
「ぷっ――――……何それ、ミウ……」
めっちゃおもしろいんだけど。
後ろからやり取りを見てたリアたちも、おかしそうに笑ってる。
「ミウおいで」
オレが呼ぶと、ふわんと腕の中に入ってくるミウを、今度はだっこしたまま、アランの腕の中に、はい、と渡してあげる。
「は。こいつ何、オレのことおちょくってんのかな?」
アランがおかしそうに笑ってオレに視線を向けてくるので、うん、そうなんじゃない?と笑い返す。
「……まあ可愛いから許すけど」
「……ミウが頭の上に座ったの、初めて見た。肩にはのってたけど。あー可愛い……」
クスクス笑ってしまいながら、アランの腕の中に納まってるミウを、よしよしと撫でた。
その時。
ウエストに腕が回って、後ろから、ふわ、と抱き寄せられた。
「――――……ん?」
まあ、こんな事するのはルカしか居なくて。
すぐ背後にあるルカの顔を振り仰ぐ。
「ルカ?」
「……近いンだよ、お前は」
「――――……」
え。
……あ。アランと?
ミウだっこして、渡したままだったから、まあ、多少は、近かった……かなあ???
何だかなあ、ルカ。
オレがルカをマジマジ見上げてから、アランを見ると。
不思議そうな顔してたアランが、すぐ、ぷ、と笑った。
「ルカって、めちゃくちゃヤキモチ妬く奴?」
「別に。色々前科があるからな」
ルカがふてぶてしい感じで、そんな事を言う。
えっ何それ。なんか納得いかない。
「前科って何? オレ何かした?」
「ほいほいキスされてるだろうが」
「ほ、ほいほいはされてないしっ」
「されてたわ、なんの警戒もなく、ほいほいと」
「ここの皆が、そういうのにゆるいの知らなくて油断してただけだしっ!」
何だかどうでもいいことで、ルカと争ってると。
「あー、それ1回はオレか??」
ゴウが余計な事言ってくる。
「え、なに? ゴウ、ソラにキスしたの?」
アランがそんな風に言って、ゴウを見てる。
「そう、ルカに飽きたら、オレと1回してみようぜって言ってあったっけ」
ゴウがそういえば、なんて言って笑ってる。
「ゴウ、冗談良いから、ちょっと黙っててよ」
これ以上ルカを刺激しないでよ。
……前科とか言って、まだ覚えてるんだし……。
「あ、それオレも混ぜて」
「――――……は?」
「ソラ、ルカに飽きたらオレともしようぜ。順番に混ぜといて」
とんでもない発言に、オレは背後のルカの空気が、ぴし、と固まるのが分かって。
「マジで、冗談やめてよ、面白がってるだろ。アランて女の子渡り歩いてるって聞いたぞ」
これ以上ルカ、刺激しないでってば。
ウエストに巻き付いてる腕が、全然離れないんだから。
「……お前、マジで、すんなよ、誰とも」
ルカがオレをめっちゃ見ながら、そんな風に言ってくる。
「しないってば……」
オレはそもそも、男とそんな事ほいほいする気は、さらさら無いっつの。
……マジでやめて。
ていうかどう見ても、ゴウもアランも、ルカの反応、面白がってるだけだし。
――――……まあ。
ルカとほいほいしちゃってるから、あんまり偉そうに言えないんだけど。
「とりあえず、アランの様子見に来ただけだから。手伝う事がねえならもう他行くけど」
「今は無いかな。大丈夫」
アランがミウをホワホワと撫でてから、そっと飛ばせて離した。
「夜、酒盛りしようぜ、ルカ。それまで頑張ってるからさ」
アランがそう言うと、ルカはニヤッと笑った。
「飲み比べするか? オレすげー強ぇけど」
「おー、いーな、しようぜ。オレこの町で一番強いって言われてるし?」
なんか2人、妙にバチバチしてるが、もうほっとこう。
やっとウエストから腕が離れたので、ミウを腕の中に呼んで、抱き締めながら、目の前で何やら掛け合い漫才みたいな言い合いをしてる2人と、その2人に可笑しそうに突っ込んでる3人を、眺める。
変なの。
――――……こんな見知らぬとこで。
こんな、数日前まで知らなかった人達と。
こんなに、わいわい過ごしてて。
――――……ここに居るのが普通になってるとか。
ほんと、変なの。
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