107 / 293

「眠すぎ」

「すっごい眠くなってきちゃった……」 「ん?」  ルカと温泉、かなり長いことまったりと浸かっていたら。  ほんとに、眠くなってきちゃった。 「一度シャオの町に戻って、昼寝するか?」 「……してもいい?」 「ダメな訳ねーだろ。別に今日何もねえし」  ルカがオレの腕を掴んで、立たせながらそう言う。 「昨日のダメージ抜けてねえんだろ。来いよ」 「……ん」  皆の所に行くと、ちょうど皆もそろそろ良いかって話になってたらしくて。  服を着替えて、帰る事になった。  リアと別れて、男4人で着替え始める。  濡れた服を脱いで、いつもの服をすぽ、と頭からかぶった所で、はわはわと大きなあくびをしていたら、ルカがクスクス笑う。  ふわん、と髪の毛を温かい風が包んで、髪が乾く。   「わー……ありがと……」  なんて便利なんだ、ルカ……。  口にしたら怒られそうな感想を、心の中で言っていると。  着替えの入ったカゴから、紐を手に取って、オレのウエストの所できゅ、と縛ってくれる。  なんか、これ、よくルカがやってくれる。  いつも通りなので、普通に縛ってくれる間、待ってたら。  キースとゴウが、笑い出す。 「うん……?」  どしたの?と2人に首を傾げると。 「ルカが世話焼きの奥さんみたいに見えてきて」  キースがクスクス笑う。 「王子カッコいいとか言ってる城の女達が見たら、すげえびっくりするだろうな」  ゴウは、もうほんとに面白ぇと言いながら、クックッと笑い続けてる。 「…………」  …………よく考えたら、確かに。  服のウエストの紐、結んでもらうとか。  なんか、最初にこの服を着た時から、ルカがいつも大体やってくれてて。  自然と、受けてしまっていたけど。  服着て、ベルト閉めてもらってるようなもの??  ……確かに、ものすごく、おかしいな。  と、そんな事に、今更、はっと、気づく。 「ルカ、自分でやる」 「は? もう終わったし」 「……今度から自分でやるから」 「何で? いーじゃんか、別に」 「……なんでって…… できるよ?」 「分かってるよ。一番最初は、分からねえからやってやったけど、今はもう、出来ねーと思って、やってる訳じゃねえよ」 「…………じゃ何で?」」 「最後結ぶと、なんか、オレのって感じするから」 「――――……」  意味が分からない……。 「別にすげえ嫌な訳じゃねーだろ?」 「……うん」 「じゃあ、オレはすげえやりたいから、やらせとけ」 「………………」  もうなんか、逆らう気もしない。  うん、と頷いてると、キース達が笑ってるのが分かるけど。  まあ笑われてるのルカだし。  いいや、ほっとこ……。  リアと合流は町の入り口。ついてすぐ、「ミウー!」と声を出した。  見える所には、ミウは居ない。  でも、すぐ、絶対聞こえないだろうって所から現れて、ぴゅーん、と飛んでくる。すっぽり腕の中に納まるミウを抱き締める。 「おまたせ、ミウ」  よしよし、と抱っこしていると、ゴウがミウに手を伸ばしてきた。 「お前、ソラの声、聞こえたの?」  ごついてで撫でられながら、ミウはじっとゴウを見てる。 「耳じゃないのかもね、何か、繋がってるのかな、ソラと」 「――――……?」  キースの言う事はよく分からないけど、確かに、オレの声が、ミウに届いたとは思えない。  そんな会話をしながら、ミウを抱き締めていると。  リアが「おまたせー」と現れた。  シャオの町に戻って皆と別れる。  皆は町のカジノに行くんだそうな。オレも後で行ってみたい……。  でも眠い。 「ルカもカジノで良いよ? オレ眠っちゃうし」 「――――……カジノは別に今はいい」  なんか、足元がぽわぽわ、する。  だめだ。オレ絶対、お布団入ったら即寝るな……。  こんな昼間からこんなに眠いとか。  ――――……昨日のダメージ、ほんと残ってるのかな……。  宿屋に入って、部屋に戻る。  お布団にもぞもぞ潜って、横になった。 「ルカは……? 寝ない?」 「オレは眠くないけど――――……」  ルカがベッドの端に座る。  ルカの手がオレの頭に触れた。 「いいよ。寝て」 「ん……」  でっかい手……。  あったかいなあ。  またあくびが出た瞬間。  クスクス笑いながらルカが、オレの隣に入って来て。  腕枕、の形で抱き寄せられた。 「おやすみ、ソラ」 「――――……うん。おやすみ……」  暖かくて。  あっという間に、眠りにつきそう。というか、もうほとんど眠ってる中で。 「早や……」  くす、と笑いながら言う声がして。  くしゃくしゃと頭を撫でられた、気がした。

ともだちにシェアしよう!