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「あったかすぎ」

   んんん……。  また、白い――――……。 「こいつは向こうにそのまま居て、あいつが戻る筈だったんじゃん!」 「え? そうなの? それじゃバランスおかしいじゃん。こっちの世界に来る奴は誰だったんだよ」 「動物にしたじゃん!!」  ああ、またこれか。  ――――……これ一体、何なの……。  こいつは向こう、あいつが戻る……。  バランス? 動物…………?    意味が、分かんない。 「……ソラ」  声。  聞きなれた。声。  ――――……安心する、声。 「ソラ、起きろ……」 「……ん――――……」  頬に暖かいものが触れる。  誘われるように、瞳を開けた。 「ソラ」 「……る、か……?」  ルカが、オレの頬に触れて、顔を見つめていた。  視線が合うと、ふと笑んで、そのまま抱き寄せられた。 「……またおかしな夢見たか?」 「――――……うん。そ、かも……」 「うなされてたから、起こした」 「……ありがと」  ふ、と息を付いて、ルカに身を任せていると。 「……何の夢?」 「――――……うん、なんか…… こいつはむこうで……?? あれ、なんだっけ……。 あれ忘れちゃった……」 「むこうって?」 「……わかんない」 「ふーん……」  触れてたルカの手が、すりすりと頬を撫でた。 「ソラ、眠いのは?」 「うん…… 少しだるいけど…… 平気そう。もう、宴、行くの?」 「さっき陽が落ち始めたとこ……まだじゃねえかな」 「……もすこし、こうしてていい?」 「……こうしててって」 「……ん?」 「横になってたいってこと? それとも、オレに抱かれてたいってこと?」  ルカの質問に、んー……と考えて。 「……このまま、がいい」    そう答えたら。  ルカは、ふ、と笑んだ。 「何でそんな素直?」 「――――……あったかいから」 「……ふーん」  クスクス笑うルカに、余計にすっぽりと抱き締められてしまう。 「――――……あったけえ?」 「……うん」  ……この安心感って、何なんだろう。  なんかいま、この温もりに、抗える気が、全然しない。  なんとなく、瞳を伏せていたら。  また頬に触れられた。 「――――……も少し寝る? それとも」 「――――……」  くい、と顎を捕られて、少し上向かされる。 「キスするか?」 「――――……キスだけで、済む……?」  そう聞いたら、ルカが、クッと笑う。 「それはしてみねえとわかんねえけど」 「――――……じゃあダメ」 「ふーーーん……」  ルカがそう言って。  そっと、顎から手が外れた。  あ。離した。……珍しい。 「――――……」  そのまま、しばらく、無言で過ごした。 「……しないの?」 「んー? ……まあ。昨日疲れただろうし」 「――――……」 「……キスしてたら、多分襲うし」 「――――……」  そんな台詞に、ぷ、と笑ってしまう。 「そこ、キスだけって……できないの?」  そう言うと、ルカは、んー、と唸ってから。 「――――……ベッドの上で、キスして、止まる奴いる?」 「……オレは止まると思うけど」 「無理」   即答に、苦笑いしか浮かばない。  ルカって。  ――――……ほんと。何言ってんだろ……。 「――――……時間、ないじゃん。もう夕方だし」 「……するなら、そっち優先に決まってる」  笑みを含んだ声に。 「何それ……」  ふ、と笑ってしまう。 「つか。いーよ、ソラ。――――……昨日散々やったし。疲れてこんな時間から寝てたしな、お前」  もともとくっいてたのに、更にぐい、と抱き寄せられて、そのまま、頭を撫でられる。    「目ぇつむって、休んどけよ」 「――――……」  ルカの胸に頭を押し当てられたものだから。  ルカの鼓動が、直に響く。  ――――……規則正しいそれに、すごくすごく、安心、する。  

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