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「酔っ払い2人」

  「ユウって、この町の子?」 「そうですよ、お客様が来てるからお酒注ぎにって呼ばれました」 「そうなんだ。大変だね」 「え、全然。飲んでも食べても良いし、気に入った人の所にも行けるし」 「ああ、そうなんだね」  なるほど、こういう所も出逢いの場なんだな。   ゴウとかも言ってたもんね。  ほんとやっぱり、皆、そういう欲に忠実っていうか。  しかもそれをおっきな声で言えちゃうっていうのがなあ。  こんな可愛い女の子までそうとなると、やっぱりオレにはカルチャーショックかも……。  なんて思いながら、苦いお酒を口に入れる。  んー、これなら酔わない。何て言っても、たくさんは飲めないから。  唇についたままの酒すらもちょっと苦い。  飲めば飲む程苦い気がする。  うえ、と、少しだけ眉を顰めていると。 「ソラさんて、今夜はどこに泊るんですか?」 「ん? ああ、この町の宿に泊まるよ」 「それって、1人部屋ですか?」 「……あー……ううん、2人」 「そうですか……じゃあソラさん」 「ん?」 「……私の家に来ません?」 「ユウの家?」  ん? どういう意味?  思わずじっと見つめあってしまう。 「あ、いえ。あの――――……無理なら……」  ユウの態度にようやくそういう意味だったのかと気づいて、あ、ごめん、鈍くて、と謝る。 「でもごめんね。オレがそういう事するとすごく怒る人が居て……」 「……ソラさんの好きな人ですか?」 「うーん……うん。まあ。……好き、かな」  ルカ聞いてないし。まあいいか。そう言っても。  ……まあ。好き。ではある。  ……いや待って。好き? って。  …………人に向けて口に出しちゃうと、なんか、とんでもない気がするけど。  でもルカだけじゃなくて、リアもゴウもキースも、何ならアランも、皆それぞれ好きだしな。うん。   「こーら、ソラ!!」  でっかい、ルカの声がすぐ背後で聞こえた。  うわ! ……き、聞かれてないよね? 今の。  振り返って、内心びくつきながら、ルカを見上げる。 「あ? 何そんなびくついてンだ、何かやましい事でも……」 「ご、誤解だってば……」  返事をしかけて、ふと気づく。 「あれ? 珍しい。 ルカ、ちょっと酔ってる?」 「酔ってねーし!」  そうかなあ? 必要以上に声でかいし、なんか少し口調が……呂律が……。 「な、んか、重い……ってば」  思い切り寄りかかられて、引きはがしにかかって、すったもんだしていると、ユウが立ち上がった。 「ソラさん、私行きますね」  ミウをありがとうございましたと言って、ユウが、離れて行く。  その後ろ姿を見ながら。 「……フラれたのか?」  なんて、言うルカ。  いやいやいや。  振られてないし。  ていうか、オレが断ったんだし。  ていうか、今の状況でもし振られたのなら、それは、どう考えても、このでっかい酔っ払いが、オレにまとわりついてるからだ。 「もう離れてよっ 重いし!」  ルカを離れさせた瞬間。 「ソーーラーーー!」  こっちのデカい声は、今度はアランだ。  むぎゅ、と抱き締められてしまった。  こっちこそ、完全に、酔っ払い、な気がする。  抱き付かれたというよりは、もたれかかって潰されかけてるの方が正しいかも。 「ちょ、重……」  言った瞬間、チッと舌打ちが聞こえて、ルカが、アランをオレから引きはがした。 「触んじゃねえよ」 「――――……何で? ソラは、ルカのじゃねえだろ?」  クスクス笑いながら、アランがオレに聞いてくる。 「なんかソラに構うとさー、ルカの反応がすっっっげえ面白くて、ついつい、なあ?」  ついついじゃないから!  「ソラ、今日はお前、飲みすぎんなよ?」  ルカがオレの頬に触れて、顔を見つめながら、そんな風に言う。  …………オレは今のルカにだけは、そんな言葉言われたくないけど。 「ルカこそ、もうやめといたら? なんかいつもと違うよ」 「全然平気だっつーの」  ……だから。  なんか呂律が回ってないってば。  なんかでっかい酔っ払い2人。   飲み比べなんかするから悪いんだと思うけど。  なんか笑ってしまう。

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