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「ルカが守る物」
「お酒、あの2人の所にお願いします」
お酒を持ってきてくれた人に、ルカとアランの所を指さして。
そっとその部屋を出て、外に出た。
店から出て、建物の外にあるベンチに座った。
2階の窓から騒がしい声がするけれど、でも、ここは、静か。
空を見上げると、星と月。
たくさん星が見える夜空。
「――――……綺麗だなー……」
ゲームもスマホもテレビも何もないけど。
暇だなとか、思わないなあ。
――――……毎日、なんか、楽しい。
ふ、と微笑んでしまう。
左手首のミサンガに気付いて、じっと見つめる。
誰かから見えないように、結界が張ってある?
ルカのと繋がって?
これくれたのって、初めてルカと夜過ごした次の日だったよな……。
何かに連れ去られたりしないように、守ってくれてるってこと、なのかな。
ほんとにちゃんと、守ってくれてたんだな……。こんな知らない所でまで。
でもよく考えれば。
ルカが守ってるのは、オレだけじゃない。
崖みたいな山に登るのも。
変な黄色い花を調べに行くのも。
何がいるか分かんない海に出るって言ってるのも。
……この世界の人達の為だもんね。
いっぱい色んな人、守って生きてるって、ほんとすごい。
それも、「してやってる」とか、全然そんな感じもなく当たり前みたいに。
ルカにとって、誰かを守るって、当たり前なんだろうな。
それと同じように、オレの事も、守ってくれてる。
優しい、というのか。……ほんとに、すごい。としか思えない。
そんな事を思いながら、満天の星を見上げる。
すぐ後ろで、店のドアが開いた。
振り返ると、知らない男の人。何か飲み物を持ってる。
頭に三角巾みたいな物を巻いてるし、エプロンみたいなのしてる、てことは、料理を作ってる人かな。
「……何してんの、ここで」
「え。 あ、ちょっと休憩……」
「酔ってんの?」
「いや……熱気がすごくて」
「ああ、そーなんだ。な、そこのベンチ、オレの休憩場所なんだよね。 少し退いてくれる?」
「あ、うん」
少し端に移動すると、その人は隣に座った。
同じくらいの年かなあ。
若そう。
「――――……王子の仲間?」
「……まあ。一緒にいるけど」
「王子ってすげー飲むな? アランと張る奴、初めて見た」
――――……あ、そっか。ここ、アランの町だもんね。
「……アランの仲良し?」
「まあ。この町の仲間だからな。なあ、ほんとに海に何か居るのか?」
「んールカ達はそう言ってるけど」
「どーにかできんのかね」
「……うーん…… でも、ルカなら何とかするんじゃないかな」
「王子かー。王子ってそんなにすごいのか?」
すごいのかと聞かれると。
「オレ、まだ一緒に居て、そんなに経ってないんだよね」
「あ、そうなんだ」
まだそんなに一緒に居る訳じゃないから、言える事は少ないのだけど。
「……でも、ルカ達は、すごいと思う。オレは何が居るかも分からない荒れた海なんか、怖くて出れないし。――――……覚悟みたいなものがすごいから……何とかしちゃうんじゃないかなあって」
そいつは、話してるオレをじっと見ていたけれど、その内、ふ、と笑いながら持っていた飲み物をあおった。
「じゃあ特別、うまいもん作ってやろうかなー」
そう言って立ち上がる。
「あはは。お願いします」
「名前何?」
「ソラ」
「あー……お前がソラか。 なるほど。オレ、ジェイ」
「……? お前がソラかって、どういう意味?」
「ん、それは――――……」
ジェイがそう言いかけた時。
また、店のドアが開いた。
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