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「星空キレイ」

   振り返ると、ドアから顔を見せたのは、ルカだった。 「あ、ルカ」 「ソラ」  オレを見て、ちょっとだけホッとしたように、笑う。 「何で外に来てんだよ」 「ちょっと風に当たりに……」 「言ってから行けっつーの」 「あ、うん、ごめん」  だって、アランと盛り上がってたから……。  そう思いながらも、謝ると。  ジェイが隣でくす、と笑った。 「?」  オレも気づいたけど、ルカも気づいたみたいで。  ルカも、ちら、とジェイに目を向ける。 「どーも、ルカ王子。オレ、アランの仲間で。今日も船一緒に直してたんだけど……」 「ああ」 「……アランが言ってた通りだからつい……」  クスクス笑う。 「王子がソラって奴を好きすぎるって」  ジェイが笑いながら、オレを見る。  ああ、それでさっき、お前がソラかって言ったのか。  ……アランは一体何を友達に話してるんだ。あほだな、アラン……。 「じゃーな、ソラ、またな」 「うん……」 「今から美味いもん作るから、食べて」  オレを見てから、ルカにも視線を流して、ジェイは店に戻って行った。 「――――……ソラ、消えんなよ」  言いながら、隣に座るルカ。 「ちょっと外に来ただけだってば」 「――――……目に見えるとこに居ろっつーの」 「…………」  こんな事ばっか言ってるから、「好きすぎる」とか、知らないとこで言われちゃうんだと思うんだけど。  なんか、ほんと、過保護。ルカ。 「アランとの飲み比べはどうしたの?」 「ソラ見つけてくるって、中断してきた」 「あ、そうなの?」  ますますアランに、色々思われてそうだけど……。 「ごめんね、なんか静かな所に来たくて」 「……うるさかったか?」  そのルカの質問を聞いた瞬間。  ぷっと吹きだしてしまった。 「……めちゃくちゃうるさいよね、もうどこもかしこも、うるさい」  クスクス笑いながら、ルカを見上げると、ルカはふ、と笑う。 「……でもうるさくても、楽しいなと思うんだけど」 「――――……」 「……ちょっとだけ、休みにきたらさ。星が綺麗すぎて」 「――――……お前の世界には、星はねえの?」 「星はあるよ。でも町が明るすぎると見えないんだよね。明かりの無い場所に行けば、めちゃくちゃ星見える所もあるんだけど――――…… 住んでた所は、星なんて、いくつか数えられる程度しか、見えなかった」 「星が見えない所なんて、あんのか」 「うん。 月は見えるよ?」 「ふーん……それはでかいから?」 「……でっかいし、明るいからかなあ。 星も、明るい星だけが見えて、暗い星は見えないんだよね」 「じゃあ、この星空は、好きか?」 「うん。すっごい好き。ずーっと見ててもいいかも」  空を見上げていたら、ルカが隣で、ふ、と笑う気配。  ん? とルカに視線を向けると。  ルカの手が、オレの頬に触れる。 「……ルカ、手、熱すぎ」 「そうか?」 「燃えてるみたい」  笑っちゃうほど熱い。結構酔ってるなー。 「何でそれで顔はそんなに涼しい顔してんの? 酔ってるんじゃないの?」 「顔が赤くなった事とかないなー」 「……なんか、さすがだよ、ルカ……」  よく分からないけど、さすがな気がして、そう言った瞬間。  頬に触れてた指が、うなじに回って、そのまま、引き寄せられた。 「……んっ? ぅ……」  唇が重なって、ルカの下に抱き込まれる。  咄嗟に体勢立て直そうと思ったけど、抱き締められて。   「……んん、ん……っ」  ――――……舌、あっつ……。 「……ふ、はっ……」  熱すぎて、一瞬で、溶けそうな気が、する。  何だ、これ。 「…………ッン……っ……ん、ん…………」  だめだ、これ。  ぞくん、と震える。    キスされて、そんなに経ってないのに。  息が上がって、涙が、目の端から、零れたのが分かって。 「……るか……っん……」  一瞬離させたのに、また塞がれて。  もう、ルカの背中の服を、ぎゅ、と握りしめるしかできなかった。

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