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「お菓子作り」1

   むーーー! やっぱりむかつく。  ……オレ、すり寄ってなんか無いもんね。 言いがかりだもんね。  怒ってるオレに気付かず部屋の中に入ると。またすぐ色んな人に囲まれるルカ。アランも騒ぎながらルカを呼んでるし。  あっという間に、ルカは離れた。  ………ルカこそ、色んな人に。  それこそ、誰にでも。もちろん、女の子達にも。  いっつも囲まれて、好かれて、楽しそうで。  オレはここには知り合いはほとんど居ないし。  気さくに話しかけてくれる人達と、普通に話してるだけだし。  ――――……何で、すり寄るとか言うのかなもう。  たしか、前も言われたよなー。  むー。むかつくなあ。  そんな風に思いながら、ルカをじっとりと遠くから眺めていると。  すぐ後ろでドアが開いた。 「お。……ソラか? 邪魔なとこ突っ立ってんなあ?」  ジェイが、ドアを開けたど真ん中に突っ立ってるオレを見下ろして、笑う。 「あ、ごめん……」 「ちょーど良かった、口開けて」 「あ」  口に、何かをぱく、と食べさせられる。  もぐもぐもぐもぐ。 「あ、美味しい」  なんだろ。  ……野菜の天ぷら、みたいな。 「うまい?」 「うん、美味しい」 「山に生えてる植物なんだけどさ。衣つけて揚げると美味いんだよな。今の時期しか食べれねーの。うまいだろ」 「うん、美味しい。もういっこちょーだい」 「自分で食べろよ」 「オレ今、手、綺麗じゃない」 「がきんちょか……」  言いながらも、ぱく、と口に運んでくれる。 「これほんとに、美味しいー」 「おー、そーかそーか。箸あそこにあるから、そこらへん座って待ってな」 「うん」  オレも嬉しいけど、ジェイも嬉しそうに笑って、箸を取りに行ってくれる。 「ほれ。食え食え」 「うん」 「塩、つけたら? 美味いよ」 「でもこのままが美味しいかなあ」 「そかそか」  もぐもぐもぐもぐ。 「王子とかアランは?」 「……あっち」  せっかくほこほこ美味しかったのに、ムカつきを思い出してしまい、指だけで指す。 「あぁ。飲み比べ中? なんか周りすげー盛り上がってんな」 「……もーすぐオレが勝つっとか言ってたからね、ルカ。決着つくんじゃないのかな」 「へえ。アランに勝ったらすげーけど」 「……いいよ、お酒で勝たなくて」  ちょっとムッとしながら言うと。ジェイは、ん?とオレを見た。 「何、あの後王子と喧嘩でもした?」  クスクス笑われる。 「喧嘩じゃないけど……」 「けど何?」 「……いい。ルカのことは。……塩、少しだけつけたい」 「――――……ん、ほれ」  少しだけかけてくれたので頬張ると。 「これはこれでめっちゃうまい!」 「そりゃよかった。お前食べさせ甲斐があるなー」  クスクス笑われる。 「ジェイは、料理を作る人なの?」 「そーだよ。船も乗るし、直したりもするけどな」 「オレ、お菓子作りたいんだけど」 「お菓子? どんな?」 「甘すぎないお菓子、とか……?」 「へえ? いいよ、作ってみる?」 「え? 今?」 「今日ここ貸切で、もう皆料理食べそうにないし。注文来たら作ればいいし」 「いいの? 関係ない人入っても?」 「別に大丈夫。さっきまでは何人か手伝い来てもらって大皿料理作ってたけど、今オレだけだし、行く?」 「うん、行く行く!」  ちら、とルカを見ると。  大騒ぎ中。あそこには寄りたくないな……。  割と近くに居たリアに話しかけて、ちょっとジェイと台所に行ってくるね、と伝えた。 「OK……ジェイって?」  と、リア。「アランの仲間だって」 と伝えて、オレは、リアの側を離れた。  ルカ、めっちゃお酒飲んでるけど、後で食べてくれるかなあ。  さっきまで怒ってた事とか、ぽろっと抜けたまま。そんな事を思いながら、  ジェイと一緒に、部屋を出た。

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