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「お菓子作り」2
「手洗って、これ頭、これエプロン」
ジェイの真似をしながら、ちょっと料理人ぽく変身。
やったー、なんか、突然チャンスが!
「で? お前はどんな菓子が作りたい?」
「材料があるのか知りたくて」
「例えば?」
「卵とか。小麦粉とか砂糖とかミルクとか」
「あるよ」
「え? ほんと?」
「待ってな」
ジェイはそう言って、色んな所の戸棚を開けて、全部をオレの前の台に置いてくれた。
「見てみな? これが小麦の粉」
「うん」
「砂糖はこれ」
「……舐めてもイイ?」
「いいよ」
手に砂糖を乗せてくれたので、ぺろ、と舐めてみる。
あ、なんかこれがすごく、甘いんだ。
美味しいけど――――……これはちょっとにしてみよ。
「ミルクは?」
「これ。飲んでみる?」
「うん」
これまた濃厚な……。
美味しいけど。濃いなあ。
「あとは、卵はこれね」
「…………でっか……」
直径20センチくらいある。
…………美味しいのかな、この卵……。
じーーっと見つめていると、ジェイがクスクス笑い出した。
「何で卵とにらめっこしてんだよ?」
「割ってもいい?」
「いいよ――――……これに出して」
大きなお皿を置かれる。
「…………」
……これ、どこで割るんだ?
皿にコンコンしたら、皿が割れそうなんだけど……!!
わーん、何、この未知なサイズの、デカいたまごー!!
困り切っていたら、もう我慢できないといった感じで、ぷぷっとジェイが笑う。
「この台の端っこでコンコンて当ててみな」
「こっち?」
「そう、この角のとこ」
「ん」
……ていうか、結構重いんだよー、片手でコンコンできる程度の、可愛い卵をオレにもたせてほしい……。なんなのこれ、恐竜の卵みたい。
コンコンじゃなくて、ゴンゴン、といった感じの、音が響いて。ぱり、と割れた。ぺりべり剥がしながら割る感じで、なんとか、卵を皿に出した。
「ソラ、殻入ってる。出して捨てろよ」
「はい……」
「何お前、卵を初めて見たわけじゃないだろ」
クックッと笑い続けて言うジェイ。
「オレのせか――――…… オレの居た所には、こんなでかい卵ないんだよね」
「え。そうなのか? ってお前の居た国ってどこ?」
「……ずーーーーーーっと遠いところ」
「へええ。 どーりでなんか、細っこいし、男っぽくねえなーと思った。何その国は、平和なのか?」
「どういう意味?」
「……だってお前絶対戦ったり出来なそうだし」
「…………そ、そうだね。 戦う事はない、かな……とりあえずオレの居た国は」
「こんな卵も割れない位だもんなあ」
はっはっと笑われて、かなりムカムカしつつも。
……でもまあ、その通りか。
結構、温泉とかでも男の人会ったし、色んな町でも会って来たけど。
男って、皆強そうだった。
この世界でキレイな顔の男の人って言ったらキースだけど、体はすっごいがっちりしてるし。
正直、オレ、この世界で相撲とったら、全敗するな、とは思っていた。口には出さなかったけど。悔しいから。 ……そもそも相撲あんのかな?
分かんないけど。
とりあえず、何の格闘技でも勝てる気はしない。
…………って、完全に脱線……。
えーっと。
…………どうしよう。
でか卵。
濃すぎなミルク。
甘すぎな砂糖。
粗めの小麦粉。
…………これって、美味しいクッキー出来るかな???
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