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「距離、近」

 服を着て宿屋を出て、ルカと一緒に朝ごはんを食べる。  2人なのに、結局隣に座って、なんかものすごく距離、近い。  ――――……この世界の人が、気にしないのはもう分かってる。  でもそれにしたって、近い。 「ルカ、食べ、にくい……」  少し離れると。  ルカは無理やり近づいては来ないけど、ふ、と笑って、頭を撫でてくる。  …………この人は。  オレに触ってないと居られない病……なのかな??  もういいや。  ルカの事は気にしないで、ごはん食べよう……。  その時、店のドアが開いて、リア、ゴウ、キースが3人そろって入ってきた。 「居た居た」  ゴウがオレ達を見つけて言いながら、こっちに向かって歩いてくる。 「おっはよ、ソラ」  リアが言いながら、オレの隣に座る。 「随分ゆっくりだね、2人共」  昨日は大分グデクデしてたキースは、もういつも通り涼しい顔をして、オレの前に座った。その隣にゴウも座る。 「あ、ごめんね、ソラ」 「え?」  キースに謝られて、首を傾げると。 「昨日オレ、ソラの上で寝ちゃったんだろ?」 「あ、覚えてるの?」 「いや。あんまり覚えてない。――――……なんか、下に寝てたのは辛うじて……? でもその下にソラを敷いてたのは覚えてない。ほんとごめん」 「いーよ、全然」  クスクス笑って答えると、その隣でゴウが、はははっと、笑う。 「全然じゃないだろ、ソラ」 「ん??」 「キースに押し倒されてたせいで、ルカが怒ってお前連れ帰ったじゃんか」 「――――……」  あ。そういえば。 「その後長かったろー、大変だったなー」  ぷ、と笑われて。  かあっと赤くなると。  キースが、あらら、という顔でオレを見る。 「ほんとごめんね」 「……っだ、から大丈夫だってば……」  そもそも、別に、怒ってた風だったのは、最初だけで。  大体にして、ルカが珍しく酔っ払って、甘々のしつこい人になってただけだし。 「キースのせいじゃない、から」  オレがそう言ったら。  それまで、面白そうな顔して、何も言わずに黙ってたルカは。  ぐい、とオレのウエストに手をまわして、自分に抱き寄せた。 「別に、怒ってソラを抱いてた訳じゃねえから」 「…………っ」  …………っ庇ってるのか、何なのか、分かんないけど、  抱いてたとか、平気な顔で、皆の前で言うのって、どーなんだ。  そう言う関係なの、全て知られてたって……。  わざわざ皆の前で抱いてたとか……。  そう、思うんだけど、これに反論してもきっと何にもならないし、この時間が長くなるだけだし――――……。  むむむ。と。  ルカの腕の中に大人しく収まったまま、悩んでいると。   「あ、お前らにも、言っとく」  ルカの改まった声に、皆ふと真顔になって、ルカを見つめた。  ――――……あ。こういう時は。  なんか、王子様っぽいぞ。  皆がルカの言う事、ちゃんと聞こうとしてる。  普段ふざけ合ってるゴウですら。  何言うんだろ。と、ちょっとワクワクしながら、ルカを真下から、見上げた。

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