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「キス」

 皆が話し合った結果、今日は色々な事を手分けする形に決まったみたい。  キースとゴウが、少し離れた町の付近に出る魔物の退治に行く事になった。2人で大丈夫そうって事で、リアが移動魔法で連れていって、リアだけ帰ってきて、その後迎えに行くらしい。  で、リアは日中は、薬を作ってほしいと頼まれたみたい。  この町に、体調が悪い人が居るらしい。黒魔法とは関係なくて、薬草を調合するんだって。  で、ルカは今日はアランの所に遊びに――――……否。手伝いに行くらしい。さっきアランがやって来て、「ルカ今日暇なんだって?船手伝えよ」と言いに来た。 「あ? どこ情報だよ、偉そうだな、お前」 「リアが言ってたぞ」  眉を顰めるルカに、だって早く船を出してほしいだろ、と笑うアラン。  アランは、なんかほんと飄々としてて、メンタルが強い……というよりは、なんか、ふわふわ……なんだろう。こんにゃくみたいなイメージ。打ってもへっちゃらっていうか。  言いたいことだけ言って、先に行ってるな、と消えた。 「何なんだあいつ」  やれやれ、と言った感じでため息を付きながら、苦笑いしていたオレを見て、ルカはふ、と笑う。 「何でソラ、笑ってんだ」 「………なんか2人のやり取りが面白くて」 「そうか?」 「うん」  クスクス笑ってると。  ぐい、と引き寄せられて、キスされる。 「……っン」  急すぎて、変な声が漏れてしまった。  ……っ恥ずかしいってば……っ!  ……っだから、なんで急にキスするんだ……。  もう皆がほとんど反応しない事だけが救いな気がする。 「とりあえず、ゴウとキースを依頼のあった町に送り届けてくるから」 「ああ」  キスは離したけど、オレの首に手をかけたまま、ルカはリアの言葉に頷いている。 「もし聞いてるより強敵だったら、明日オレも行くし、出直すから無理すんなよ?」  ルカの言葉に、誰に言ってんだと、ゴウが苦笑い。 「そこらへんの魔物になんか負けねーし」  聞く気のないらしいゴウの横で。 「まあ無理そうだったら、避難するよ」  キースが言ってふ、と微笑む。  3人が出て行って、ルカと2人になる。  なんか色々話してたせいで、すっかり食事が中断してしまった。 「……ルカ、あのさー」 「ん」 「キス、人前ですんのって……」 「ん?」 「オレ恥ずかしいんだけど」 「何で?」  けろっと聞かれると、何とも言えない。  ……確かに元の世界でも、外人さんはしてたなあ……。  でもオレ、日本人なんだよねー……。  日本人で、そこらで気にせずキスする人とか、あんま居ないし。  オレは間違いなく、その部類の人ではないし。  分かってもらえそうにないので、思いついた別角度から攻めてみる事にした。 「……オレが、キスされた時の顔とか……他の人に見られてもいーの」 「――――……」 「……アランとかにも見られてるし。それ、いいの?」  そう言うと。  ルカは、んー、としばらく考えて。  少し嫌かもな、とぼそ、と呟いた。 「そうでしょ、だから――――……」  と、不意にぐい、とまた首に手が回って。 「え」  ルカを見上げた瞬間。  抱き込まれるみたいな形で。深くキスされた。 「……っンん――――……っ?」  なんか、めちゃくちゃ、キスされる。  舌、激しいし……っ。 「……っん、ふ――――……ぁ」  少し離されて。  すでに涙が浮かんだ瞳をこじ開けて、至近距離のルカを見上げると。 「――――……こうやってキスすれば、ソラの事は見えないよな?」 「………………っっ」  何、言ってんだー! ルカのばかー!! 「――――……っやめ……」  また塞がれて。  抵抗をやめるまで、キスされる。 「……っ……」  いくら、朝ご飯の時間はもうとっくに終わってて――――…… この店、今ほとんど人は居ないって、言ったって……少しは、居るし……っ。  ここの人達は、相変わらず全然気にしてないみたいだけど……っっ!!  そーいう問題じゃないし……っっ。 「………っふ、ぁ……」  ゆっくりキスが離れて。  ルカが、くす、と笑う。 「んー……でもそのエロい顔、見せんのも、嫌だな――――……」 「~~~っっっ」  エロい顔とか言われると、無性に恥ずかしくなって、かあっと赤面してると思うけど。  全部ルカのせいじゃないかー!! もうーー!!! 「まあすこーし、減らしてやるよ」  …………なんだ、少しって。  ルカのバカ。  もう。バカ。  言うとまたキスで塞がれそうなので、心の中で言っていると。   「ソラ、クッキー焼き終わったら、船んとこすぐ来いよ? とりあえずその間は、ジェイに見守っとくようには頼むから。あと――――……一応、ミウも連れてけ」 「……? ミウを?」 「――――……何となくあいつ、ソラを守る気がするから、一緒に居ろよ?」  さっきここに来る前、子供達におやつ貰ってたから、ここに連れてこなかったんだよね。 「……うん、分かった」  ミウが守ってくれるとか。  ……ふふ。可愛いから嬉しいけど。  

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