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「覚悟」

 調べる、かぁ……。  どうしてオレがここに来たか。  帰れるのか帰れないのか。  ……調べて分かるのか、分からないけど。  ――――……ルカ達は多分、真剣に調べてくれようとしている。  ……これが、ものすごく長い夢の可能性もあるって。  オレだけは、その可能性も、思っているけど。  ここに居てもいいとなったら、オレはどうするのかな。    ――――……やっていたゲームの世界と同じなんだって。  ルカ達に言った方が良いんだろうか。  でもそんなの、信じてもらえるんだろうか。  もし、ルカ達が、オレがやってたゲームの、作られたキャラクターなんだって。もしも、信じたとして。  そしたら、どう思うんだろう。  分かんない。  分かんないけど。  分からない事をずっと、考えていても、仕方がない。  もう何が夢で、何が現実で、ここがゲームの世界なのか。  今のオレには、判断する術がない。  無いなら、しょうがないよね。   ――――……よし。……覚悟、決めよう。  昨日、ぼんやりと思っていた気持ちが、今ルカ達と話してたら、何だか急に、強くなった。  一生懸命、生きてる、ルカ達と、  オレも、ここに居られる限りは、一生懸命、生きる。  もし他の世界の話とか、何か情報が出て来て、  ゲームの世界の話と関係してそうなら、それを話した方が良いのなら、その時に話そう。  ルカが、まっすぐ、オレを受け入れてくれて。  皆も、こんな訳の分かんないオレを、ちゃんと受け入れてくれるから。  このまま、ここでずっと生きたとして。  さっきルカが言った通り、ルカの側で、ずっと生きて。  もしここで死んでも、それはそれでよかった、と思えるくらい。  ちゃんと生きよう。  とりあえず。  ここに居る限り、それで行こう。  そう決めて。  隣で皆と話しているルカを見つめた。 「……どうした?」  気づいたルカが、ふ、と笑って、オレの頬に触れて、ぷに、とつまむ。 「……何でいつもつまむの?」 「ん……何で??」  聞くと、ルカが可笑しそうに笑って、ますますぷにぷにしてきて。 「すげーやわらかいから?」  クスクス笑いながら言われて、柔らかくないし!と言って顔を引こうとすると。腰に回ってきた手に、更に近づけられる。 「そんなに柔らかいの? 触らせて」  リアが楽しそうに言って。  すると、オレが答えるより先に、ルカが「ダメ」と言う。  別に、リアに触られたって、オレもリアも何の問題も無いし。  むしろ触って、柔らかくない事を証明して欲しい。  男なのに、ほっぺがぷにぷにみたいな、イメージ、やだし!!  むむ、とルカを振り返り。 「オレが柔らかくないって、リアに言って欲しいから、少し触ってほしい」  そう言うと、ルカがムッとしつつも。  少しオレをリアの方に向けた。  リアが楽しそうに、オレに手を伸ばして、ぷに、と頬に触れる。  しばらく両方につんつん触っていたんだけれど。その内。  ぷぷ、と笑い出した。 「めっちゃやわらかい……」 「なんで!」  もう!とリアを見ると。 「何でそれで触らせたらぷにぷにしてないって、あたしが言うと思ってるのかを教えて欲しいなあ」 「そんなに柔らかくないし!」 「ソラの世界の子はそんなに皆、柔らかいの?」  一部小声になりつつ、そんな風にリアが聞いてくる。 「~~~っ」  ぐい、とウエストに回った手に引き寄せられ、ルカの体につなぎ留められる。 「ほらな?」  クスクス笑われて。むーーーっと口を閉ざしていると。 「つか、もう触んなよ。リアでも、イラっとする」  ルカが言った瞬間、3人は、うわー、と口を開けて、もう何も言わない。 「――――……」  ほんと、ルカって。  ……恥ずかしいとか。全然無いな。  普通の人って、ヤキモチとか嫉妬とか、こんなはっきり人前で言わないよね。 「もういいや。ルカのノロケとか聞いてんのも飽きた。よし、今日どうすっか決めようぜ」 「そうしようか」  ゴウとキースがそんな風に言ってる。  ちら、とルカを振り返って見上げると。 「ん……?」  ふ、と笑うルカ。  ――――……あーなんか。  日々、毎日、なんか、ずっとだけど。  どんどん、瞳が優しくなっていく気がするし。  …………もうなんか。  その分、どんどん、ルカに吸い寄せられていく気がする……。

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