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「色んなことが」

 ルカの話をするのはいったん休憩。  色んな意味で、動揺するから。  甘酸っぱい実を砂糖で煮てジャムみたいにしてみたり、袋で簡単な絞り出しクッキーを作ったり。色んな種類を試しに作ってみた。  それからもう1種類。卵と砂糖を、箸をいっぱい持って、泡立ててみる。  ルカに、どーにか頼んで泡だて器を作ってもらおう。  なんて思いながら一生懸命泡立てて、もったりしてきたので、粉とバターを合わせて、焼き窯に入れてもいいというお皿に流し込んだ。 「これは何?」 「マドレーヌ……」 「ふうん?」 「うまく焼けたら食べてみて」 「ああ」 「ルカも美味しいっていうかなあ……どーかなー」  美味しいといいなあ。  なんて、思っていたら。  ジェイが笑う。 「ルカ、絶対美味いっていうから大丈夫だって」  クスクス笑われる。  あ。またルカの話、しちゃった。と気付いて。 「ミウにもあげるからね」  さっきから椅子に座ってる感じのミウを見下ろして笑うと、ミウも嬉しそう。もう。ほんといつも、可愛い。  ジェイと一緒に、焼き窯に全部入れて、ふ、と息をついた。 「焼けるまで、お茶でも飲むか?」 「うん、飲みたい」 「ソラ、そっちの棚から、お茶用のカップ出して」 「うん」 「あ。お茶の葉、奥から取ってくるから。その間くらい離れて平気か?」 「うん、全然平気だよ」  苦笑いで答えると、ジエイも笑いながら、部屋を出て行った。 「あれかなあ、カップ……って、高いー」  これ背が高い人じゃないと無理なんじゃ……。  よいしょ、と背のびをして、触れたけど。やっぱ無理だな、落としそう。  手を引こうとした瞬間。 「うわ、ソラ、それじゃないし、危な――――……」 「え……」  後ろから急にかかった声にビックリして振り返った瞬間、手がお皿に変に触れてしまって、落ちて来て――――……。  うっわ、直撃――――……。 「……っ」  覚悟した瞬間。何かに、ふわりと包まれた。  すぐに、ガシャン!と派手に割れた音がしたけれど。  オレには当たらなくて。  あれ? 避けた?  と思った瞬間。 「え――――……」  ふわ、と、ルカが――――……突然、目の前に現れた。 「……え?」  歩いてきたとか。ジャンプしたとかじゃなくて。  目の前にルカが、浮いて現れた、というか。 「――――……っ」  ルカも驚いた顔をしていたけど、咄嗟に体勢を整えて着地すると同時に。 「ソラ?」  ぐい、と抱き寄せられた。  何が何だか、分からない。 「おいおい、なんか今、色んな事が――――……あったよな……?」  ジェイが、唖然とした顔で、オレ達に近寄ってきた。    いつの間にか空を飛んでいたミウが、近づいてきたので、腕の中に抱き締めた。 「ジェイ、ごめん、お皿……」 「あぁ、オレがいきなり声かけたから……使わないからこないだ適当にそこにのせた奴なんだ。ちょっと出てたから。悪かったな。良かった、当たんなくて」 「うん……ごめんね」 「――――……あー……と」  ルカは、考え深げに黙っていたけれど。  抱き締めたままのオレを見下ろして。 「……皿が、ソラに落ちそうになった?」 「……うん、そう」 「どん位危なかった?」  ルカは、ジェイを振り返って、そう聞いてる。 「そこの割れてるでかい皿だから、あのまま直撃してたら、かなり痛かったと思うけど…… なんか、ソラ、弾き返したよな?」 「――――……う、ん……よく分かんない。直撃すると思って、目、つぶっちゃって……ズレてたのかな?」 「いや、どう見たって直撃なはずだったんだけどな?」  言ってから、ジェイは、ルカをまっすぐ見つめた。 「にしても、ルカは移動魔法で飛んできたのか? 突然空から現れたよな?」 「――――……オレはその魔法は使えないから」  ……そう、だよね。いつリアに頼んでるもんね。  考え深げに瞳を揺らして。  ルカは、ふ、と視線を少し下げた。 「――――……お前だよな?」 「ん?」  ルカの視線が、オレの腕の中に向く。  ん? ミウ?  どーいうこと?  ルカを見て、首を傾げてしまう。

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