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「クッキーが可愛い?」

「よし、これで材料はとりあえず全部そろったか?」  台に並べられた材料をざっと見て、うん、と頷く。 「ありがと、ジェイ」  急にお菓子作らせてほしいなんて頼んで、こんなに協力してくれるとか、普通無いよなあと思って、心から感謝。  ジェイって、なんか、ほんと優しいというか。  良い人だ。 「ん。あ、なあなあソラ」 「うん?」 「このクッキーさ、売っても良い? ちゃんとソラのクッキーって事で売るからさ。入った金額のいくらか、渡すし」 「え、そんなの、いいの?」 「いいのって、当たり前だろ」 「じゃあ、それってオレが稼いだってことになる?」  嬉しくなって聞くと、当たり前だろ、とまたジェイが笑う。 「わー、すごい嬉しいかも! 美味しく作ろうー」 「なに、稼いだこと、ないのか? ソラ」 「あー……うん、無い」  向こうではアルバイトはしてたけどね。  ジェイが少し不思議そうな顔をする。 「ふうん? 家が金持ちとか?」 「……ん、まあ。そう、かな」 「ふーん?」  はっきりちゃんと答えないオレに、ジェイは少し考え深げにオレを見ていたけど。 「ソラって、もしかして、ちょっと訳アリか?」 「……うん。ごめんね」  言えなくて。  そう思いながら謝ったら、ジェイは、ぽんぽん、と背中を叩いた。 「いいよ、別に。――――……能天気そうな顔してんのに、訳アリなんだな」 「何それ」  ぷ、と笑ってしまうと、ジェイもクスクス笑う。 「まあ、何にしても、自分で稼ぐの楽しいよな?」 「うん、嬉しい」  笑顔で答えると、ジェイもまた笑って、頷く。 「じゃあ昨日よりうまいの作って、売れるようにしようぜ」 「うん」 「あぁ、そういや、ソラ達が寝てる間に、昨日残ってたクッキーを町の子供や女子達に食べさせて回ってたんだけどさ」 「うん」 「すげえ大好評。甘味が足りないとか言われるかと思ったけど、優しい味で美味しいってさ」 「ほんと? やったー!」 「オレ、菓子って甘い方がいいと思ってたんだけど。エネルギーにもなるしさ。そうじゃないみたいだな」 「そっかー」  嬉しいな。  そう思っていたら、ジェイが可笑しそうに笑った。 「ははっ。そういう顔かもなー、ルカが気に入ってんの」 「ん?」 「何でもない。さ、始めるか」  ぽい、とエプロンを渡される。 「うん!」  昨日と同じ、エプロンつけて、料理人みたいな恰好に変身。  手を洗って、2人で分量決めながら、相談しながら。 「なんでこれこんなに固いの……」  卵はやっぱりでかくて、割りにくい。  ……これを生んでる動物が見てみたい。恐竜みたいだったりするのかな……? あ、でも、ダチョウとかってこんな卵だっけ??  悩みながら卵と格闘してると、ジェイにぷっと笑われる。  頑張って割って、混ぜて、材料に混ぜていく。  なんだか、こっちに来てから。  ルカに、良い意味でも悪い意味でも、とにかく引っぱり回されて、  自分から何かしたり、あんまり無かったからかな。  昨日も今日も、作ってる時、すごく楽しい。  なんか、自分の意志で、自分のしたい事、できてる感じで。 「ね、ジェイ、クッキーさ、昨日と同じ感じで作ろうかなって思ってるんだけどね」 「ん」 「やっぱりお菓子は、ちょっと可愛くしたいんだ。丸も良いけど、形を色々変えたいの。ミウ型やクマも良いけど……色々作りたい。絞り出しとかできるかなー……」 「絞り出し?」 「うん」 「んー、とりあえず、使える器具は全部ここにあるから、使えるなら何でも使っていいぞ?」 「うん。ありがと」  色々漁りながら、ふと。昨日のことを思い出す。 「ルカがさ」 「ん?」 「ミウとかクマのクッキー、可愛いって言ってくれてたからさ。ルカでもそう思うんだなーと思って」  昨日、そう言ってくれてた時の、ルカの笑顔を思い出して、クスクス笑ってしまう。 「ルカでもそう思うんなら、子供とかにはもっと可愛いって思って貰えるよね?」  そう言って、ジェイに視線を流すと。  ジェイは、ふ、と笑った。 「ルカが可愛いって言ってたのは、ソラが嬉しそうに作ってたからだろ」 「え」 「まあちょっとはクッキーも可愛いとは思ったんだろうけど。言ってたじゃん、一生懸命作ってたからってさ、お前が可愛いから、クッキーも可愛いんだろ、ルカは」  何度か瞬きしてから。  思わず、かあっと赤くなった。  そうだ、なんかそういえば昨日そんなような事言われて、あん時も赤くなったんだ、オレ。  ――――……今も、何で赤くなってるのか、よく分かんないけど。  耳が、熱いし。何これ。  「……ソラ、真っ赤。ルカに見せてやりたいな、こんな会話で真っ赤になるとこ」  クックッと笑いながらジェイがオレを見る。 「……やめてよ。ルカ、絶対笑うし」 「ルカにとってソラが可愛いから笑うんだろ? つかお前、最近分かったとか言ってるけど、結構ルカの事好きだよな?」  クスクス笑うジェイ。  ますます熱くなっていく。 「……も、いいから、早く作ろ」  パタパタ顔を扇ぎながら、そう言うと、ジェイは笑って頷いた。  ちら、と浮いてるミウを見上げると。  何だかとっても楽しそうにオレを見ていて。  ふ、と笑顔になってしまった。    

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