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「すごい奴に好かれてる?」

 味見しながら、いくつかの実を取ってきた。  木になってるから好きな味見つけろよとルカが言ってたけど、本当に色んな種類の実がなってて、選ぶのも楽しかった。  お店に戻って、お菓子を準備をしていると、不意にジェイが聞いてきた。 「ルカがお前を好きなのは分かったけどさ。ソラは?」 「え? オレ?」 「ソラはルカの事好きなの?」 「……うん」 「間が空いたな?」  ジェイがクスクス笑う。  自分でも、今咄嗟に、「うん好き」とは答えられなかった事に苦笑いだったので、突っ込まれて更に少し困った。 「……好きかなーと……思い始めた所っていうか……」 「あぁ。まだそう思ったばっかり?」 「……うん」  なんかそんな風に言われると、すごい恥ずかしい。 「ふーん。……思い始めたって、じゃあそれまでどう思ってたんだ?」  それまでは……。  ――――……最初は、ルカがオレを抱きたいなら、もうそれでいいから、この世界で死なないように守ってもらおう……みたいな。  ルカの事どう思ってたかというと……。  ……イケメンで声エロくて、超ドSの、人からかってばっかりで、王子だからか、超、 偉そうで、独占欲みたいのが強くて、下半身やばくて、でも頼りにはなるような気がして、たまに優しかったりする、よく分かんない勇者。  …………うん。  言えないな。あはは。   「んー……ていうか、オレ、まだ、会ってからそんなに経ってないんだよ」 「じゃあ何でルカはあんなにお前に惚れてんの?」 「――――……うーん……?」  そんな風にまっすぐに聞かれると。  ……全然、分からない。  そんなに「惚れてる」のかどうかもなあ…??  何だかミウがふわふわ浮いてオレを見つめてるので、わかんないよね、とミウと笑いあってしまう。  すると、ジェイは、くっと笑い出して。 「ソラ、のどかだから、かな~。ルカは王子で色々大変だろうし。お前みたいなのどかな奴で、和みたいのかもな?」 「さあ……? 分かんないや」  最初抱かれた時は、全然そんな感情があった訳じゃないだろうし。  ……泣き顔が好きみたいな、変な事言ってたような。  これもなんか言えないな。  ……言えない事ばっかりだな。  苦笑いしか浮かばない。 「あとでルカに聞いてみよ」 「ん? 何を?」 「何でソラが好きなのかって」 「――――……」  何て言うんだろう。ちょっと気になる。 「ソラもちょっと聞いてみたいんだろ?」  クスクス笑われて、大きく頷くのも変かなと思いながらも。 「ルカが、他の人に何て言うのかはちょっと、聞いてみたい」  そう言うと、ジェイは、分かる分かる、と笑った。 「後で聞いてやるよ。楽しみにしてな」  クスクス笑うジェイ。 「ああ、でもさ――――……」 「ん?」 「アランもなんか、ソラは可愛いとか言ってたから。可愛いのかもな?」 「……かもなって聞かれても……」  頷けないんだけど。  ……可愛いって言われても……。 「オレあんまり男を可愛いって思った事ねーから、なんかいまいち同意ができねーんだけど」 「……オレも出来ない」  そう言うと、ジェイはクッと笑い出した。 「もしかしてお前って、元々は、男は対象じゃない奴?」  ずばり聞かれて。  ジェイを見つめてしまう。  答えるまでもなく悟ってくれたジェイは、あっは、と笑い出して。   面白くてしょうがないといった感じで笑う。 「そんな笑わなくても……」  むー、とじっとり見つめていると。  なんか同じような顔でミウも、オレを見てる。  あ、真似されるわけね、オレの顔。  ジェイはそっちのけでほっといて、ミウの顔に、ぷぷ、と笑っていると。 「あー、面白い。 だからさっきも、すげえ間があったのな」 「ん?」 「好きかって聞いた時」 「あー……」 「男を好きっていうの、まだ抵抗あんの?」 「……うん。すごいあるかも」 「ははっ。おもしろ」  せっせと準備はしながらも、ジェイはめっちゃ笑いながらそんな風に言う。 「まあそんなに会ってから経ってないなら尚更だけど――――……男が対象じゃないお前に、好きとか言わせるルカってさ。やっぱりすげえなって思うかも」 「――――……」 「オレ、直接会ったり話したのは初めてだけど。噂は常に飛んでくるんだよな。何をしてくれた、どこの魔物を倒してくれたとかから始まって、モテるっつー武勇伝みたいなのもさ」 「――――……そーなんだ」 「皆が王子を好きなんだよな。この世界で、唯一って感じの存在だし」 「――――……うん」  ……そうでした。そういえば、そういう世界、だったなぁ。   「そーいう王子が惚れてる相手、とか思うと、ソラ、なんかすげーな?」 「ん?――――……オレは、別にすごくないけど?」  別にオレがすごいんじゃないし……??  そこは頷けずに、首を傾げていると。 「すごいと思うけど?」 「そうなの?」  聞き返すと、ジェイはおかしそうにまた笑い出して。 「そうそう。 すごい奴に好かれてるって思って、浮かれてれば?」 「浮かれてればって……」  ジェイって、明るいなー。  何だかおかしくなってきて、クスクス笑ってしまった。  

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