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「考えられること」

 びっくりして、ルカを見上げると。 「全然考えてなかったぽい顔だな?」 「……うん」 「やっぱりお前、何も考えてないな」  クスクス笑う、ルカ。 「夢だとして――――……お前が寝たのって少なくとも、今のその年だよな?」 「……うん」 「オレ、小さい頃からの記憶も全部あるけど。お前が寝てから、生まれた訳じゃねえし」 「…………う、ん。そう、だよね……」 「……夢って可能性は、無いんじゃねえの」  ……うーーーん。わかんない。  あ、あれだよ、あれ。  生まれた時から病院にいて、長い年月かけて、夢の中で全部の世界を作り上げて…………。いや、何か、無いな。  なんかオレって、そんな、色んな人の設定をちゃんと考えられる奴な気は、しない。  って、何か自分で言うのも、何だかなって感じではあるけど。  ……てことは、それも無しかな。 「――――……?」  不意に、後ろから顎を持たれて、上げさせられて。  後ろに居るルカに、無理無理な姿勢で、キスされる。 「……ン……ン……?」  く、首、苦しい――――……ひく、と喉がヒクついた。  ぎゅ、と目をつぶって耐えてるのに、ルカの舌はオレの舌を絡め取って、めちゃくちゃキスしてくる。 「……ふ、……ん、ぅ――――……っ……」  最後にカプ、と舌を噛まれて。  ゆっくりと唇が離れて、見つめ合う。 「……生きてるよなあ? オレ達って」  くす、と笑うルカ。  する、と中に手が入って、胸に手が這う。 「……っ??」 「すぐ熱くなって、息上がるし。すげードキドキするし」 「――――……ッ」  クスクス笑って、またちゅ、とキスされて。    胸に直で触るって。  ……どんな確かめ方なんだ……。  胸から手を外させると、ルカはクスクス笑いながら。 「とりあえず、夢説は、置いておこうぜ。もしそれなら、どうにもしようがないから、無視しよう。――――……どっちかっていうと……」 「……?」 「この世界があるんだから、お前の世界もあってもおかしくない。もしかしたら他にもたくさん世界はあって、例えば隣り合って存在してて。何かの条件とか、何かの拍子に、飛ばされるっていう現象が起こる――――……って方が、ありそうじゃねえ?」 「――――……」  まあ確かに。  無いとは、言えないのかもしれない。  世界がどうやってできてるかなんて、知らないし。  オレは、オレが生きて感じる事の出来る、身の周りの事しか、確かには感じられない。それよりずっと遠い世界が、どんなふうに存在してるかなんて。分からないんだよな……。 「それなら、オレもお前も、小さい頃からの記憶もあって、普通に生きてても、おかしくない」  そんな風に言われると、そんな気がしてくる。  だってもしこれで、ほんとに寝てて、オレの夢なんてことになったら。  こんだけ毎日、とんでもない感覚与えられて、死にそうになってるのに、全然起きもしないで、もう、オレってば、どんだけネボスケなんだっていう話な気もする……。  いやでも、オレが全部の設定考えてるオレの世界、というよりは、ネボスケ説の方がオレっぽいような。……って何考えてるんだか、分からなくなってきた。  ルカが、オレの頬に手をかけて。じっと見つめてくる。 「そういう事なら、同じように飛んでる奴がいるかもしんねーけど……聞いた事ねえし」 「……うん」 「でも飛ばされた奴がひっそり生きてたら、誰にも知られないよな。……むしろ、どっか違うとこから来たなんて言ったら、頭おかしいと思われるし、言わないで生きてく奴の方が多そうだ」 「うん。そう、だね」  確かに、そうだ。うん。  オレはたまたまルカ達の目の前に落ちたけど。  あれが、誰も居ない所に落ちたなら――――…… 言ったら怪しすぎるから、きっとなかなか人に言えなかったかも。  てことは。  オレみたいな奴が他にも居るけど、知られてない、とか?? 「お前の登場がとんでもなかったから、信じたけど……出てきた瞬間を見てなかったら、信じられなかったかもしんねえよな? すげー怪しい奴だろ、普通」  クッ、と笑いながら、ルカがオレに口づける。  全く同じ事、考えてる。  ……うん。でも、そうだよね。そうだと思う。  キスがゆっくり離れて。じって見つめられる。 「魔王と戦ってるオレの目の前に落ちてこなければ、こんな事もしてなかっただろうな?」 「――――……」  ……それは別に良かった……かも……?  と、ちらっと、思うと。 「お前、考えてること、全部、筒抜けだからな」  じろ、と睨まれる。  何も言わず、え。と思いながら、ルカを見つめると。 「……ほんとお前って、素直じゃねーよなぁ、ソラ……」  後頭部に回ってきた手に押さえられて、キスされて。  途中でもうほとんどルカの方を向かされて座っていたので、さっきより、体勢的にはきつくはないけど。 「……ン……っ……」  ああ、ほんと。なんでこんなに、キス、キツイのかな。  でも、何だか、応えてしまう。 「……ン、ん…………ふ……っ」  喉の奥で、声が漏れたら。ふ、と笑ってルカがキスを離して。  親指で、オレの唇に触れる。 「絶対、ほんとは、オレとしたいくせにな、お前」  くす、と笑いながら、むむ、と口を閉じてるオレをヨシヨシと撫でる。  なんか悔しいし、ずっと黙ってるのに。ルカはクッと笑って。 「は……。可愛い」  むぎゅ、と抱き締められて、ああ、もうなんか。  ――――……イチャイチャしてるだけな気がしてきた……。

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