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「書物庫へ」

 悔しいけど反撃も出来ず。  結局何だかかなり無駄に、イチャイチャさせられながら、食事を食べ終わった。 「もう食べないか?」 「うん。おなかいっぱい」 「じゃおしまい。レジーんとこ、行くか」 「うん」 「全部これにのせて、ソラ」 「うん」  食べ終わったもの全て、タイヤのついたワゴンにのせる。  大きな窓に鍵を掛けて閉めると、ルカがワゴンを部屋の前に出す。  ちゃんと靴の紐も結んで、身なりを整えて、立ち上がる。 「用意できたか?」 「うん」  ドアの所で待ってるルカの隣に並ぶと、ルカが大きな扉を閉める。  ルカが小さく何かを唱えた瞬間。  キン、と空間から音がするような気がして。 「――――……???」  ルカを見上げると。「結界」と笑った。 「誰も入れないようにな」 「これって、ずーっと、頭の中で唱えてたりするの?」 「いや。これに関しては張っちまえば寝てても勝手に続いてる。破られたら、分かるし」 「どーやって分かるの?」 「どーやって……ああ、破られたなーって感じる」 「何それ。すごいねー便利! 泥棒とか入れないじゃん!」  便利だなー、と笑ってると、ルカもクッと笑った。 「……ソラってほんと、魔法とか好きだよな?」 「うん、好き。使いたい」  ゲーム上は使ってたけど。  どういう仕組みなんだろう、ほんと魔法って。  オレが集中すれば使えるの?  ……ていうか、そもそもミウが飛んでるのかも魔法とか言ってさ。  全然集中してるように見えないんだけど。  ほわほわのモコモコで可愛くて。あれで集中してんの??  むーん、ミウ、謎。可愛いけど。 「城に本格的に帰ったら、魔法を学ぶとこがあるぞ。出たら?」 「出る出る、絶対出るね!」 「……まあ、まわり、子供が多いけど」  クックッとルカに笑われる。 「まあ違和感ねえだろ」  頭掴まれて、めちゃくちゃヨシヨシされる。  もう。撫でたってムカつく事言ってんのには変わりないけど。 「ソラが炎出せたら――――……」 「ん?」 「祝ってやるよ、盛大に」  クスクス笑うルカ。  むー、祝わせてやるー! と思いながら、ルカの隣を歩く。 「――――……」  やっぱり全く道が覚えられない。 「オレもう、ルカの部屋戻れないよ」 「あぁ。わざとそうなってる」 「え?」 「オレの部屋にそう簡単にたどり着けないような作りになってる」 「そうなんだ……」 「そう。さっき料理運んできた奴とかは、毎日決まった道をひたすら通るから覚えてる感じ」 「――――……それって」 「まあ、いきなり襲われたりしないように、て感じだな」  ルカが死んだら、この世界が大変なんだもんね。 「魔王さえ倒せば、こんな結界や戦いも要らなくなるはずだから」 「……うん」  オレがそれ、邪魔したんだよな……。  はー……。  ちょっとため息を付きたい気分に陥っていると。 「こっち、ソラ」   ルカに手を引かれて曲がった先に、とても大きな扉。ルカの呪文で、開く。  中に入ると、おびただしい量の本。  圧倒されている間に、後ろで扉が閉まった。  天井がやたら高い。  シン、とすごく、静か。  ああ、なんか。  書物庫……って図書館のことだよね。  どこの世界も同じような、特殊な静けさなんだな……。  不思議。  なんて、思いながら、中を見渡す。  

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