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「広い心?」

   ルカにくっついて、宝物庫に連れて行ってもらう間。  所々で会う城の人が、皆、嬉しそうにルカに話しかける。  何度も中断されながら、少しずつ移動。 「……ソラ、何か怒ってるか?」 「……いいえ」  そんな言い方で答えると、は、と笑って、ルカはオレの腕を引く。 「場所知らないくせに、先行くなよ」 「――――……」 「なかなか進まないから怒ってんのか?」  クスクス笑いながら、ルカがオレを見下ろしてくる。 「……そうじゃない」  そんな事で怒ってないもん。  久しぶりなんだろうし、ルカも相手も楽しそうだし。それで良いと思うし。 「じゃあなんでムッとしてんだ?」 「…………」  たまに現れる女の子達は、ルカの腕や体に、自然と触れる。  あんなに触るかー? 普通の関係で。  もうあれ、触ってた全員そういう関係なんじゃねーの。もー。  別に良いですけど。オレも女の子と付き合ってたし。全然良いけど。 「ソラ」  ぐい、と引かれて、キスされる。 「――――……」  口開けないで、むー、としてると。  ルカはおかしそうに、クッと笑い出して。キスを外して、オレの肩に手を回した。 「ほら、もうすぐ着くぞ」  くねくね階段を下りたり登ったり、迷路みたいな場所を一緒に歩いて、ようやく着いた。  ルカの呪文で扉が開く。 「迷路みたいなのは何で?」 「ああ。なかなか辿りつかないように」 「――――……だって、ルカの呪文で開くんでしょ?」 「……ん、まあ。でもあれなんだよな。オレが完全に意識を失ったりすると、結界とかも一瞬解けちまうから。寝てる位なら大丈夫なんだけどな。……つか、怒ってたの、どーした?」  くす、と笑うルカに、じっと見つめられる。 「言えよ、怒ってないで、ちゃんと」  顎を掴まれて、見上げさせられる。 「……ルカ、触られ過ぎ」 「――――……ん、ああ。なるほど」  く、と笑うルカ。 「嫌だったのか?」 「……別に」  言いながらも、ジト目で見上げると。 「別にオレから触ってた訳じゃねーだろ」 「――――……」  そうですけど。 「オレも別に女の子と付き合ってたし、文句言う事じゃない、と思ってるけど」 「けど?」 「……何かムカつく?」 「――――……ふうん?」  ルカは面白そうに瞳を細めて、オレを覗き込む。 「……まあ、オレも今の発言死ぬほどムカつくから、ほんとならお仕置きタイムだけど……」 「え……どれ?? どの発言?」 「女の子と付き合ってたし、てやつ」 「えっ。それ、死ぬほどムカつくの?」 「んー、まぁ、そうだな」 「……過去の話だし。ていうか、オレがムカつくのは、今触られてるからだし」 「ムカつくのに、過去とか関係ねーけどな」 「…………ルカってさー、そんなに心狭くて、いいの? 王子なんだからさ、もっと心広く……」  ぷ、と笑い出したルカに引き寄せられて、上からまっすぐ見下ろされる。 「オレ、他の奴には心広いから、大丈夫」 「――――……」  ゆっくりキスされて、ルカが、離れる。 「ソラに対してだって、心広いだろ?」 「――――……」  まあ、確かに、広い時もあるんだけど。何でもして良いぞ、みたいな。何でもやってやるぞ、みたいな。  いやでもな……? 「オレが心狭いの、ソラのそういう関係にだけだから。王子としては、全く問題ねえな」  当たり前の事のように、堂々と言ってるルカをまじまじと見てしまう。 「……オレのそう言うのも、心広くあってくれてもいいんじゃ……」  だって別にオレ、今そういう事しようとか、一切思ってないし。  しかも今話してたのなんか、超過去の話だし。そう思っていると。 「無理だな」  きっぱり言い切られて、キスされる。  ……なんだかもう、文句言う気を削がれる。 「そんだけ、オレのって思ってるって事だから。オレが心広くなったら、どーでもいいって事だけど。いいのか?」  ……それは。良くない。かもしれない。けど。 「極端なんだよー、ルカー」  少し困りながら言うと。面白そうに笑って、一度キスしてから、ルカはくる、とオレの向きを変えさせて、部屋に向かわせた。 「ほら。中見なくていいのか?」  目の前は、思ってたような感じではなかった。よく漫画とかで見るような、キラキラした金銀財宝がむきだしで置いてあるわけじゃなくて。  ……ていうか、まあ、そりゃそうか。  色んな大きさの箱が、たくさん置いてある。 「開けて見てもいいの?」  ウキウキしながら聞くと。 「当たり前。だめなら、連れてこねえよ」  ふ、と笑われて、オッケイを貰えた。  やったー!  ウキウキワクワクしながら、中に足を踏み入れた。  

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